開発協力の本領発揮に必要な「巻き込む」農業支援 多様なステークホルダーと「ミンダナオ和平」

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高木:2ヘクタールから100ヘクタールへとはすごいですね。

地方政府の巻き込み

高木:ただ、小隊や分隊が自動的にコーポラティブになることもないわけで、コーポラティブ結成はワークショップを行ったんですか。

高木佑輔(たかぎ ゆうすけ)/政策研究大学院大学准教授。1981年群馬県生まれ、慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程単位修得退学。博士(法学)。在フィリピン日本大使館専門調査員、デ・ラサール大学教養学部国際研究科助教授等を経て現職。専門は東南アジアを中心とする新興国の政治と外交。主な著書に、Central Banking as State Building: Policymakers and Their Nationalism in the Philippines, 1933-1964.(Singapore: National University of Singapore Press, Kyoto: Kyoto University Press, Quezon City: Ateneo de Manila University Press, 2016. 第34回大平正芳記念賞受賞)、『国際協力の戦後史』(共編、東洋経済新報社、2020年)などがある(撮影:尾形文繫)

落合:やりました。その際、それぞれミュニシパリティ(町)の、農業担当者(Municipality Agriculture Officer、MAO)を頼りました。通常の地方政府にはMAOがあり、当時のARMM(ムスリム・ミンダナオ自治政府)の中にもARMM協同組合庁という組織がありました。そこから人を呼んで、協同組合っていうのはこういうふうにつくって、ゆくゆくはARMMの協同組合庁に登録してくれれば、いろんな補助金だとか便益を提供できると伝えます。あるコーポラティブは、協同組合庁からの資金援助を受けてトラクターを購入しました。

高木:MAOの人たちは地方政府専属の農業専門家みたいな人ですよね。MAOを巻き込むのは落合さんのアイデアだったんですか。

落合:これは私の経験でもあるし、多分、オールJICAの経験でもあると思います。JICAは1990年代ぐらいから、地方自治体支援に取り組んでいます。

そのときに、日本人専門家を送る人数は限られてますから、その専門家が付帯的にNGOを活用してセブとかダバオで、自治体能力向上をやりました。うまくいったところもあれば、うまくいかないところもありました。特に、契約をして、お金をNGOに提供している間はいいんですけども、それが終わると、NGOの資金は続きません。彼らがやりたくてもなかなか現場で実施できなくなります。それで事業の継続性を担保できませんでした。その経験から、持続性を担保するためには、その地域にコミットしている組織を巻き込んでいくしかないということを経験的に知りました。

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