不平等を解決するための方法、例えば労働時間ではなく成果に対して賃金を支払うとか、解雇の問題が起きた際の金銭解雇のルールを作るといったことに対して、既得権益を持った人たちがずっと拒み続けて今日に至っている。今、一部の人たちがその割を食っているわけですけれども、その背後にある大きな構造問題をちゃんと変えていかないと。一部の派遣がどうこうという話ではないんです。
若い世代に関しては、教育という大きな問題があります。これまで日本の教育制度は終身雇用・年功序列賃金と一体だった。ただ、若いころに安い給料を我慢すれば後で高くなる、という約束がもはや守られなくなって、将来に対する期待所得が大幅に減っているのが現状です。
そこで能力に合わせて支払うといっても、今の大学教育の質の低さのせいで、若い人に能力が十分身に付いていない。そこに大きな構造問題を抱えています。
日本は世界的に見ると大学の進学率も低いし、教育に対する公的な資金の投入も少ない。また例えば大学を作りたくても不動産を保有していなければ認可されないなど、参入に対する規制が非常に多く、競争が十分になされていない。抜本的な教育改革が必要だと、私は思いますね。
被選挙権の年齢を引き下げ、若者の政治参加を促す
――こういった問題はやはり政治の力で変えなければならないのでしょうか。
今の政府は圧倒的にシルバーデモクラシーで、高齢世代向けの施策に偏っている。これが悪循環を生む。高齢者は投票に行き、若い人は行かない。その責任は政府にありますが、若い人も政治にもっと関心を持たなければいけないし、変わる必要がある。
そのために私がやればいいと思うのは、1つは被選挙権の資格年齢の引き下げです。選挙権は18歳からになりましたが、被選挙権は変わっていない。衆議院議員が25歳で参議院議員と知事は30歳。30歳になるまで立候補できないっておかしくないですか。それを20代前半ぐらいに引き下げると、若者の中から自分が政治をやろうという人が出てくるだろうし、周りの人たちの問題意識も高まるでしょう。
もう1つはインターネット投票。今は投票するために券を持って決められた時間に決められた場所に行かなければならない。それをいつでもどこでも投票できるようにすれば、若い人は投票しますよ。エストニアではそれができているわけですから。政治と若者の相互作用が必要でしょう。
PPP(購買力平価)で測ったら、1人当たりのGDPを韓国に抜かれた。でも、皆そんなこと感じていない。失業率が低くて、なんだかんだいっても就職できる。犯罪率も低い。
しかし重要なのは、こういうのどかな状況が永遠に続くわけでないということです。それに対する健全な危機感がない。本当は、かつて戦後の若い世代だった今の政界の長老たちが持っていたような、強烈な危機感を持つべき状況だと思いますね。
(構成:勝木友紀子)
(4日目第2回は日本人が知らない「脱成長でも豊かになれる」根拠)
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