フィリピン大統領選で異色のコンビが有力に 2022年5月、独裁者と現職大統領の子どもが出馬

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11月15日、ドゥテルテ大統領の娘・サラ氏が大統領候補になることを訴えるサラ氏の支持者たち(写真・EPA=時事)

2022年5月に投開票されるフィリピン大統領選の構図が固まった。各世論調査でトップを走るのは、21年に渡り圧政を敷いた故フェルディナンド・マルコス元大統領の長男ボンボン・マルコス元上院議員だ。1986年の政変で一家が国を追われてから35年。マラカニアン宮殿への凱旋を夢見てきた母イメルダ夫人の執念は実るか。「ピープルパワー」で独裁者を放逐した国民は、息子を再び迎え入れるのか。これから半年、ドゥテルテ現大統領一家を巻き込んだ政治ドラマが展開される。

現職大統領一家のドタバタ劇

ボンボン氏が本命に躍り出たのは、現大統領の長女サラ・ドゥテルテ・ダバオ市長が大統領選への立候補を見送り、副大統領候補としてタグを組むことを決めたからだ。それまではサラ氏が大統領選の世論調査で一貫して首位を独走していた。

最終的な立候補締め切りの2021年11月15日までドゥテルテ家を中心に権力闘争劇が続いた。ダバオ市長再選をめざすと言い続けていたサラ氏は11月9日、市長候補の座をドゥテルテ家の次男セバスチャン同副市長に譲ったうえで、父親の所属政党とは違う政党LAKAS―CMDに入党し、11月13日に副大統領選へ届け出た。

これに対してドゥテルテ大統領陣営は、副大統領選に立候補していた側近のボン・ゴー上院議員を大統領選の候補に鞍替えさせた。そのうえで報道官は「大統領は11月15日に副大統領選に立候補する」と発言した。親子で副大統領の座を争うのかと騒ぎとなったが、結局、大統領は11月15日、上院選に届け出た。それまで「政界を引退する」と宣言していたが、あっさりと前言を翻した。

大統領は11月14日、ラジオ番組に出演して「サラの鞍替えや副大統領立候補については何も聞いていなかった。最近は話もしていない」「サラは大統領選の世論調査でもリードしていたのになぜ副大統領を選んだのか。マルコス陣営からなにがしかの働きかけがあったのだろう」などと不快感を示し、大統領選ではボンボン氏ではなくボン・ゴー氏を推すと話した。さらにドゥテルテ氏は11月18日の会見で、ボンボン氏を「甘やかされて育った息子で、危機に対応できない弱いリーダー」などと腐した。

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