「コロナで路上生活」38歳元派遣の"10年前の後悔" 非正規の若者たちを取材して浮かんだ共通点

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別の20代男性はさまざまな観光地のリゾート派遣で働く中で、正社員登用の話を持ち掛けられたが、「長く働き続けるかどうかわからないので、会社に迷惑をかけてはいけないと思い、断った」という。結局、コロナ禍の中で路上生活となった。

正社員の責任、会社に迷惑をかけたくない――。取材を続ける中で何度か耳にした言葉だ。

たしかに正社員の中には長時間労働や厳しいノルマを課せられながら、賃金水準や待遇は非正規労働者と変わらない“名ばかり正社員”もいる。ただ彼ら、彼女たちに正社員の責任とは何かと尋ねると、明確な答えが返ってくるわけではない。

責任というなら、非正規労働者だって出退勤時刻は決められているし、ある程度の作業効率も求められる。正社員になったとして管理職になるのが嫌なら、断ることもできる。もし異動が嫌だとしても、いつ路上に放りだされるかもしれないリスクと比べたら、まだましなのではないか。

会社に迷惑がかかるという理由にしても、無断欠勤や「今日辞めます」はご法度かもしれないが、ルールにのっとれば、辞める権利と自由は、いつでも、誰にでもある。

私がそう指摘すると、先ほど挙げた寮付き派遣を渡り歩いてきた20代の男性は少し考えた末にこう答えた。

「何もしなくても仕事を紹介してくれる派遣は正直楽というのもあるかもしれません。それに、中卒の僕にとっては派遣でも働き口があるだけありがたいです」

「正社員を雇うリスクも理解できる」と語る非正規

リゾート派遣で働いていたという20代の男性は「いろんな職場で友達ができるので派遣も悪くない」という。そのうえで「経営者の立場で考えたら、正社員を雇うリスクも、僕には理解できます」という持論を語った。

こうした若者たちに共通するのは、会社や企業に対してどこまでも対等であろうとする意識なのではないか。一見誠実にみえるが、ともすれば「働かせていただいている」という“下から目線”と紙一重でもある。コロナ禍のような不測の事態が起きても働き続けることは、企業や会社の温情によるものではなく、労働者の当たり前の権利である。

取材で出会った若者たちにもう1つ共通するのは、生活保護を利用することへ忌避感である。先述した大手チェーン系列のホテルで働く30代の男性はコロナ解雇で失業し、家賃が払えなくなってシェアハウスを追い出されても「周囲に知られたくない」という理由で生活保護の利用を拒んだ。

また、寮付き派遣を経て悪質無低に放り込まれた20代の男性は「生活保護を受けている人は、やっぱりそういう目で見られますから。寮付き派遣でもいいので1日でも早く仕事を始めたい」と訴えた。

新型コロナ災害緊急アクションにSOSを求めるほど追い込まれているにもかかわらず、労働者の権利もいらないし、「国民の権利」である生活保護の利用も拒む。その権利行使にネガティブな態度は若者の貧困、そして日本の貧困の背景にある特徴の1つでもある。

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