「コロナで路上生活」38歳元派遣の"10年前の後悔" 非正規の若者たちを取材して浮かんだ共通点

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3 ✎ 4 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

一方、冒頭で紹介したツトムさんは、新型コロナ災害緊急アクションの支援を受け、生活保護を申請。現在は賃貸アパートに入りなおし、仕事を探している。生活保護の医療扶助によって通院も再開することができた。

意外なことにツトムさんは2020年の年末から今年5月までの半年間のネットカフェ生活について、「不思議なもので、賃貸アパート暮らしをしていたときよりも楽でした」と振り返る。

ネットカフェ代は最低でも1泊1500円はかかるので、それまでの家賃よりも割高になった。かといって家賃の滞納歴があるので、新たに賃貸アパートを探すことも容易ではない。

「その日暮らしは慣れてしまうと気楽」

ツトムさんは給料日前に金欠に陥らないよう、月給制から日給制に変えてもらった。「手元にお金がなければ使いようがない」と考えたからだ。日給は8000円。週末は仕事がないので、1日に使えるお金は5000円ほどだった

結果、1日の食事をカップラーメン1つや、お菓子だけですませることが増えた。通院もできず、服薬も中断せざるをえなくなった。そんなネットカフェ暮らしのどこが楽だったのか。

「月給の中で家賃や光熱水費のやりくりを考えなくていいからですよ。目の前の1日を乗り切ればいいその日暮らしは、慣れてしまうと結構気楽でした。最近は、ネカフェも出入りが自由だったり、住民票が置けたり、郵便物を受け取れたりというところもありますし。高いですけど、カレーが食べ放題というとこもありますしね」。

ネットカフェで住居喪失者向けのサービスが充実しつつあるという。

ツトムさんは、正社員化の話を断ったことをどう思っているのか。今も後悔はないのだろうか。ツトムさんは迷いつつもこう答えた。

「(30代後半という)年齢や病気のことを考えたら、なれるんだったら、なっておいたほうがよかったかな。今はそう思っています」

(第3回は「親が学費負担放棄」学生を絶望させる新たな貧困

藤田 和恵 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事