500人に1人がコロナ死でも「株価爆上げ」米国の闇 怒れる教授が「GAFA+Xはヤバい」と警告する訳

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本来、こうした暴走にブレーキをかけるのが政府の役割のはずだ。勝者と敗者が出るのは必然とはいえ、勝者の制度乱用を防ぎ、敗者のためのセーフティーネットを整備して再挑戦を促し、富を再分配する。

いま政府はすっかり弱体化してそれができなくなっている。政府を大企業の支配から国民の手に取り戻すべしと彼は説く。そのために国民は、まず投票といういちばん簡単な方法で、有権者としての自分の存在を政治家にアピールする。

私たちができることでいちばん重要なことは、いちばん簡単なことでもある。投票だ。中間選挙でも地方選挙でも、投票に行こう。(中略)
誰に投票するかより、まず投票することのほうがずっと重要だ。肝心なのは、あなたが政治家にとって時間を割くだけの価値を持つ存在だと知らせることだ。
どうしてアメリカには富を若者から老人に移すような制度が存在しているか。それは老人が投票に行くからだ。(中略)政治家は自分に投票しない老人の要求にまで応える可能性が高い。将来の選挙で投票してくれる可能性があるからだ。
政治家が歯牙にもかけない人々は誰か。投票場に行かない(あるいは大金を政治献金しない)人々すべてだ。
(『GAFA next stage 四騎士+Xの次なる支配戦略』より)

政治家は襟を正して巨大企業から流れてくる金とは距離を取る。大統領選候補者はいつでも資産公開する。議員は株取引をするのも好ましくない(議員はなぜか平均より高いリターンを得ている)。肥え太った巨大企業には独占禁止法を適用して分割する。

コミュニティー意識を取り戻せ

さまざまな提言の中でひとつ意外であったのが、若者による国への奉仕活動である。これは行きすぎた個人主義により失われたコミュニティー意識を回復させ、アメリカにしっかりと根付いてもらうことを目的としている。

一例としてコロナ部隊(平和部隊のような)を組織して、感染者、接触者の追跡から始めることを提案している。奉仕といっても無給などというケチなことは言わず、月2500ドル(!)くらいの給料を払うべしと言っている。こうなるとむしろ若者救済策、若者への投資である。

アメリカ人、特にビジネス界は政府による干渉を嫌う傾向があるが、いまやそんなことを言える状況ではないとギャロウェイ氏は感じているようだ。巨大企業が政府に伍する、あるいは凌ぐほどの力を持ち、健全な資本主義まで脅かされている。

その暴走を抑えるための「人々の間の政府」を取り戻すこと、それが「大きな政府に育てられた」(とツイッターのプロフィール欄に書く)ギャロウェイ流の愛国心であるのだろう。

渡会 圭子 翻訳家

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わたらい けいこ / Keiko Watarai

上智大学文学部卒業。主な訳書に、スコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』、ロバート・キンセル/マーニー・ペイヴァン『YouTube革命 メディアを変える挑戦者たち』、マイケル・ルイス『かくて行動経済学は生まれり』(以上、文藝春秋)、エーリッヒ・フロム『悪について』(ちくま学芸文庫)などがある

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