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日本と米国「物価上昇の歴然たる開き」を解くカギ 高度サービス産業の成長有無が経済力の差に

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アメリカで成長している高度サービス産業は、これだけではない。

「情報」「専門的、科学技術的サービス」「経営」などが顕著に成長している。

これら付加価値の高いサービス業が成長したために、サービスの価格が上昇したのだ。

サービスには、貿易の対象とはならないものが多い。また、中国工業化の影響もない。

そしてアメリカでは、以上のような付加価値の高いサービス産業の成長があった。それがアメリカのサービスの価格を引き上げ、消費者物価全体を引き上げたのだ。

日本では高度サービス産業が成長しない

日本ではどうか?

図4には、金融保険業と不動産賃貸業のGDPの計を、製造業のGDPと対比して示す。図3のアメリカの場合と比べて、明らかな違いが2つある。

第1は、金融保険業、不動産賃貸業のGDPが、製造業のGDPよりも小さいこと。

第2は、金融保険業、不動産賃貸業のGDPが成長していないこと。

この2つの点で、日本の金融保険、不動産賃貸業は、アメリカの金融サービス業とは異質のものだ。それは、日本経済全体の物価や成長率を引き上げる役割を果たしていないのだ。

結局、日米間で消費者物価の動向に大きな差が生じたのは、付加価値の高いサービス産業が、アメリカで成長したのに対して、日本で成長しなかったからだ。

そして、日本経済が停滞するのは、アメリカのような高度サービス産業が誕生していないからである。

つまり、産業構造の変革がなければ、健全な物価上昇はありえない。

しかし、産業構造の改革は、金融政策で実現できることではない。だから、日本銀行の消費者物価目標は、金融政策では実現不可能なことなのである。

なお、以上で見たのは、長期的な趨勢だ。

短期的に見ると、原油価格の高騰と顕著な円安により、消費者物価の上昇率が高まる危険がある。それは、消費者の立場から見て望ましいことではない。

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