日本と米国「物価上昇の歴然たる開き」を解くカギ 高度サービス産業の成長有無が経済力の差に

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ところが、この間に消費税率が3%から10%へと、7%ポイント引き上げられている。これは、消費者物価指数を3~4%ポイント程度引き上げたと考えられる。その影響を除けば、日本では消費者物価はほとんど不変だ。 

日米間で、なぜこのような差が生じているのだろうか?

日本でもアメリカでも、財価格は上がらない

まず、日本の消費者物価指数における「財」の価格推移を見よう(図1参照)。

(外部配信先では画像や図表を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

「生鮮食料品を除く財」の価格について2020年を100とする指数で見ると、1970年代には、オイルショックの影響で顕著な上昇があった。しかし、1990年代以降は横ばいないし若干の低下だ。

指数は、1995年1月の102.3から2021年1月の102.1まで、ほとんど変わらない。

「工業製品」という分類項目で見ると、1995年の103.5から2020年の100.0へと下落している。

アメリカの消費者物価における「食料とエネルギーを除く財」の価格は、図2に示すとおりだ。

【2021年11月29日8時20分追記】初出時、図2と図3のグラフに誤りがありましたので修正しました。

1982~1984年を100とする指標で見ると、1995年1月には138.2、2020年1月で144.1であり、1995年からの上昇率は4.3%だ。2021年1月において146.5であり、上昇率は6%だ。

日本の場合のように下落したわけではないが、アメリカの消費者物価指数が全体としてはこの間に70%以上も上昇したのと比べれば、大きく違う。

財価格の動向について日米で大きな差が見られないのは、実は、当然のことである。

財(とくに工業製品)は、貿易を通じて、同一製品の同一価格化が実現されるからだ。

そして、工業製品価格が1990年代中頃以降ほとんど上昇していないのは、新興国工業化の影響が大きい。とくに、中国がこの頃に本格的な工業化に成功し、世界の工場となって安価な工業製品を世界中に大量に供給したことの影響が大きい。この影響は、日本もアメリカも、ほぼ同じように受けているのだ。

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