スプートニクの落とし子たち 今野浩著
「理工系エリートの栄光と挫折」なる副題そのままに、東大工学部応用物理学科を昭和37年に卒業した秀才たちの人生行路を描いた異色のノンフィクション小説である。
元東工大教授で金融工学のパイオニアでもある著者が、ドキュメンタリーとして残そうと決意したのは、主人公、後藤公彦氏の強烈な個性と数奇な運命の故だったらしい。米銀の日本代表となって超高給を得た後、大学教授の職を得る苦難の中で離婚、病魔に襲われる晩年まで。大昔の会話がリアルに再現または脚色される。
教授として出世していく同窓の仲間もほぼ実名で登場するが、勝者の一人、野口悠紀雄氏を含め率直な人物評と各人の言動が披露されていて、物議をかもさないか心配になるほどだ。これほど赤裸々に仲間内の人間像が描かれるのは珍しいが、理系人間の出世劇ドラマを通じて若者の理工系離れから日本の未来が危ぶまれる現状へ警鐘を、との思いも伝わってくる。(純)
毎日新聞社 1575円
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