奥田務・J.フロント リテイリング会長兼CEO--百貨店は大衆と共にある 時代に合わせ変化対応を

--現在店舗は国内のみですが、海外には出て行かないのですか。

当然、海外のことは頭の中にありますよ。そのためには三つの条件が必要。海外でも勝ち残れるビジネスモデルを固めること。それをマネジメントできる人材を作ること。万が一のときに平然と撤退できるように、国内事業でしっかり稼げる体制を構築しておくこと。今は少なくとも、国内で力をつけることが先決。

--消費低迷の根っこに将来不安があると指摘されました。その点、北欧モデルに注目しているようですが、日本は何を学ぶべきですか。

日本が抱えている大きな課題は経済成長と社会福祉の充実ですよ。福祉を強化しようにも、経済成長を伴わないとその原資が出てこない。二つをうまく両立させて運営しているのが北欧諸国だと思う。全部はまねできなくても、得られるヒントはいくらでもある。

皮肉っぽく聞こえるかもしれないが、北欧諸国を見ていると「信なくば立たず」だ。北欧の国民は政治や行政を信頼している。日本の場合はどうか。政府は、国がこれからこういう方向に進めていくので、安心してくださいと未来図を描けるか。描けるのなら、消費者は増税も納得できると思う。そこがあいまいで、ころころ変わると不安は解消できない。

日本はどうあるべきか超党派でもっと議論すべき。高負担・高福祉の北欧型でいくのか、低負担・低福祉の北米型でいくのか、中負担・中福祉でいくのか。今の日本は低負担・高福祉と思うので、矛盾が出てきている。僕自身は中間所得層がしっかりある社会が安定しているし、日本に合っていると思う。国も企業も個人も自分の頭で考え、責任持って行動することが必要だ。

■J.フロント リテイリングの業績予想、会社概要はこちら 

 (鈴木雅幸(週刊東洋経済編集長)、高橋志津子 撮影:吉野純治 =週刊東洋経済2010年7月17日号)

おくだ・つとむ
1939年生まれ。慶應義塾大学卒業後、大丸入社。97年社長、2007年松坂屋と統合し持ち株会社J.フロント リテイリング社長兼CEO、10年3月から現職。

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