「欧米のブランドは大まかに言ってタイプが2つに分かれる。一つはトップにカリスマデザイナーが君臨するオートクチュールの一群と、SPA(製造小売り)系のファストファッションブランドだ。一方、日本のファッション産業は特殊。国内では万単位のブランドが百貨店やショッピングセンターの陣取り合戦を繰り返し、『レッドオーシャン』で消耗戦を繰り広げている」(田野氏)。
「オムニ」を活かせば、日本のブランドは強い?
だが、その過程で、カリスマ店員や読者モデル、さらに客の中からはアンバサダーと呼ばれるようなひとたちが生まれ、一人のカリスマデザイナーだけでなくみんなでブランドの世界観を作り上げる形ができてきた。そこから生まれた「ブランド独特の匂い」や「ディテール」は、」東南アジアの人たちにも共感を生むことができる。彼らの日本という国に対する尊敬、期待、親近感もそれを後押しする」。
高級ブランドに行くと、お仕着せのユニフォームを着た店員が、上から目線で客を値踏みするような雰囲気がある。だが、ジェイランウェイではそんなことは無用だ。また、H&Mのように売れそうな商品を2週間で作ってグローバルで売ればたしかに値段は安いかもしれない。われわれは、店員に接客されて、相談して、試着して、買ってみるという体験も含めた日本流の価値を提供していく。モノだけだったら、真似されてすぐに終わってしまう」(田野氏)。
一方、東南アジア発の現地のローカルブランドの競争力はどうか。実は「ローカルブランドはマーケットが小さいため、セグメントで切ろうとすると小さくなりすぎる。だから尖ったブランドが生まれにくい。もしくは生まれてもすぐに潰れるブランド不毛の地と言わざるを得ない。さらに安いファストファッションブランドに今後飲み込まれていく可能性もある」(同氏)という。
日本のファッションブランドは、アジア進出では何度も失敗してきた苦い経験を持つ。アパレルウェブも2004年から2007年にかけ、日本アパレルの中国への進出をサポートする事業をした経験がある。同社が仲介役となり中国の商業施設が日本のブランドに進出を求めたが、その間隙をぬって韓国ブランドが参入。背景には、中国における反日感情の高まりと、日本と中国間の物流などオペレーションの課題などがあった。
AWCGはオペレーションの課題を解決すべく、東南アジアの取り組みでは新たなスキームを敷く。例えばシンガポールの郵便事業会社であるシンガポールポストと業務提携契約を締結、域内への配送は同社が担う。このため、同通販サイトに出店するブランドは、注文が入り次第、商品を国内の指定倉庫に納品するだけで、容易に販売が可能になる。東南アジアに反日感情が薄いのも追い風だ。
果たしてユニクロ、無印良品などに続く、アジアのファッションでの大きなサクセスストーリーは生まれるだろうか。まずはジェイランウェイに注目だ。
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