未公開株詐欺の防止策施行を延期、日本証券業協会を阻んだ難題
「創業間もない企業にとっては死活問題だ」。あるベンチャー経営者はそう憤る。日本証券業協会(日証協)が発表した、未公開株詐欺の防止策が波紋を広げている。日証協は7月2日、反対意見が多数寄せられたことを理由に、20日に予定していた施行を延期すると表明した。
日証協が改正案を発表したのは6月10日。その内容は、上場前の企業が親族や役員、従業員以外の個人投資家から出資を受けた場合、会員の証券会社が株式公開を引き受けることを原則禁止するというもの。これにより、未公開株詐欺の被害を未然に防ぐ狙いがあった。
ところがベンチャー経営者などが「エンジェル投資家などからの出資が制限される」と一斉にかみついた。ブログやツイッターなどネット上でも議論が盛り上がり、日証協が7月1日に締め切ったパブリックコメントには300件を超える意見が届いたという。
改正案では有価証券報告書を提出した場合などを例外規定に設けたが、「ベンチャー企業には負担が大きすぎる」との意見が大半。
日証協側は「エンジェル投資家の出資を否定するものではない」と釈明するが、表現のあいまいさが誤解を招いたことは事実で、「説明が足りなかった」と認めている。
厳しい資金調達環境
波紋が広がった背景には、ベンチャー企業の資金調達環境の冷え込みもあるようだ。