未公開株詐欺の防止策施行を延期、日本証券業協会を阻んだ難題
「日証協の規則改正がなくても、ベンチャー投資の低迷ぶりは深刻」と、日本エンジェルズ・フォーラムの井浦幸雄代表理事は話す。同フォーラムでは、創業間もない企業に出資するエンジェル投資家と起業家との交流会を催しているが、参加者は「10年前と比べて3分の1ほど」(井浦氏)に減っている。株式や不動産などの資産価値が下落し、富裕層の投資意欲が減退しているという。
経済産業省はエンジェル税制などの優遇措置で起業家支援を図っているが、「認知度が足りず想定ほど利用されていない」(同省)。ベンチャー関係者にとって厳しい環境が続く中、改正案を危惧する向きが強まったといえる。
一方、未公開株詐欺の被害拡大も深刻だ。国民生活センターには4月以降、昨年の3倍近いペースで相談が寄せられた。特に第三者機関を介さず、未上場企業が自ら株式購入を勧誘するケースが増加しており、「金融商品取引法などの規制が働かないため、防止が難しい」(日証協)。
今後、日証協は規正自体を見直す考え。ただ、詐欺防止とベンチャー投資の活性化という、二つの難題が浮き彫りになったことは確かだ。
(許斐健太 =週刊東洋経済2010年7月17日号)
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