コロナ禍で看護師を目指す人が増えた英国の事情 簡易な防護服、汚染白衣は自宅で洗濯…なのに

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コロナによる景気の後退で、失業者が著しく増加しているのは、英国でも同じだ。看護師は一般的に不況に強い仕事といわれ、不況になるほど看護師を志望する学生も増える傾向がある。

特に社会人学生の看護師へのキャリアチェンジが多い英国では、この傾向が強く、実際、私の所属する外科にコロナ感染が1次ピークの最中に看護助手として採用された同僚は、文系の大学を卒業して、これまで映像系の会社でオフィス勤務をしていた。

コロナによる倒産で失業して、未経験でも応募可能だった看護助手の仕事に申し込んで採用され、将来は正看護師を目指すそうだ。このことからも、安定した職業を求めて看護師を志望する学生が増えている、という分析ができる。

もう一つ、看護学生の志望増加に挙げられる理由は、学生の感情面の変化だ。歴史的なパンデミックを経験したことで、医療に興味を持つ学生が増えた、ということだ。

今年9月に入学したばかりの看護学生と話した際、「2次ピークのコロナ医療の前線で献身的に闘う看護師のニュースに感動しました」「自分も前線で命を救いたい、そう思って看護学部を志望しました」と、志望動機を語っていた。われわれが昨年、あの過酷なコロナ病棟の勤務をしてきたあの姿に学生たちは刺激を受け、同じ道を志してくれたのだ。

それにしても。ふと脳裏によぎるのが、各大学が競い合うように学生をヒーロー扱いした、あのニュースのことだ。筆者が会ってきたコロナ前線の学生の本音とは異なる印象の、あのニュースに影響を受けて看護学部を志望した学生は、決して少なくない。

結果として国策でもある「看護師の増加」に不可欠な、「看護学生の増加」という目標を今年は遂げた。しかも、医療従事者にとって最も困難と思われた年にだ。英国では2、3の大学を除くとすべてが国立大学であり、大学が発信する内容が国への忖度につながることは容易に想像できる。

そこに何らかの意図があったのかは不明だが、この結果が偶然であれ必然であれ、明るいニュースに変わりはない。

ピネガー 由紀 イギリス正看護師、フリーランス医療通訳

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Yuki Pineger

日本での看護師免許や勉強経験はなくイギリス義務教育(GCSE)、高等教育A-levelを経てマンチェスター大学看護学部卒業。現在は、イギリス中部に在住してNHSの大学病院に勤務。通常は外科部門に所属して手術前後の患者看護に当たる傍ら、学生指導も担当している(2020年4月から新型コロナ感染病棟に期間未定で異動中)。

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