コロナ対策「一律給付」はやはり高所得者の丸儲け 子育て世帯向け給付金に課税するのは困難だ

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このように、源泉徴収が広く定着しているわが国において、給付金を課税対象とすることは、実務的に極めて困難なのである。

加えて、18歳以下の子どもに一律給付といった場合、その給付は誰の所得と見なすのか。この給付金を課税対象とするなら、そうした問題も生じる。

結局、このような仕組みの繁雑さから、給付金を課税対象にしないことにすると、一律の給付は高所得者もそのまま受け取ってしまうことになり、所得格差を助長する。

児童手当の仕組みを使うべきだ

やはり、所得格差を助長しないようにするには、給付を入り口の段階で一律ではなく所得制限を付けるしかない。特に、子どもへの給付となれば、現行制度として、児童手当がすでに存在する。児童手当の仕組みを使えば、所得制限を付けて子どもを対象として給付ができるし、児童手当の受給申請がすでに済んでいるから、追加して手続きする必要なく受け取れる。

子どもへの追加給付ということなら、児童手当の臨時増額をすれば目的は十分に達成できる。所得制限のある児童手当の臨時増額ならば、追加の手続きが不要なのに、わざわざ一律給付にするために追加的な受給申請が必要というのは、何とも皮肉なことである。

わが国は、デジタル化が進む前から源泉徴収という簡便な仕組みを普及させてきた。デジタル化を進めるために、納税手続きや受給申請などでも、利便性を高める必要がある。ただ、デジタル化をさらに進めるにあたり、源泉徴収という仕組みをなくす必要があるのかについては、さらなる国民的議論が必要だ。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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