このように、源泉徴収が広く定着しているわが国において、給付金を課税対象とすることは、実務的に極めて困難なのである。
加えて、18歳以下の子どもに一律給付といった場合、その給付は誰の所得と見なすのか。この給付金を課税対象とするなら、そうした問題も生じる。
結局、このような仕組みの繁雑さから、給付金を課税対象にしないことにすると、一律の給付は高所得者もそのまま受け取ってしまうことになり、所得格差を助長する。
児童手当の仕組みを使うべきだ
やはり、所得格差を助長しないようにするには、給付を入り口の段階で一律ではなく所得制限を付けるしかない。特に、子どもへの給付となれば、現行制度として、児童手当がすでに存在する。児童手当の仕組みを使えば、所得制限を付けて子どもを対象として給付ができるし、児童手当の受給申請がすでに済んでいるから、追加して手続きする必要なく受け取れる。
子どもへの追加給付ということなら、児童手当の臨時増額をすれば目的は十分に達成できる。所得制限のある児童手当の臨時増額ならば、追加の手続きが不要なのに、わざわざ一律給付にするために追加的な受給申請が必要というのは、何とも皮肉なことである。
わが国は、デジタル化が進む前から源泉徴収という簡便な仕組みを普及させてきた。デジタル化を進めるために、納税手続きや受給申請などでも、利便性を高める必要がある。ただ、デジタル化をさらに進めるにあたり、源泉徴収という仕組みをなくす必要があるのかについては、さらなる国民的議論が必要だ。
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