プロより稼ぐ人も?ゴルフ「アマ資格」改訂の衝撃 来年から賞金を受け取ることが可能になる

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エリートアマには金銭的な心配を減らす意味ではいい改訂ともいえるが、いわゆるハングリー精神がなくなるおそれもあり、自制は必要だ。成績が落ちれば、スポンサーもいなくなる。プロの世界と同じだ。

では、一応ほとんどの人がアマ資格を持っている一般ゴルファーに、何かメリットがあるのだろうか。再び市村氏に聞いた。

――ハンディキャップを採用する競技については、賞金はだめで賞品だけとのことですが、スクラッチ競技に賞金を出す、例えばゴルフ場のクラブ選手権などに賞金を出すということは可能になる?

10万円以下なら可能です。地域のアマを育てるために、地元企業が賞金を出してバックアップする、というようなのはいいことかもしれません。アマを集めて全国を回るサーキットのような大会も可能です。

――書籍やネットでの発信はどうでしょう。ゴルフの動画発信をする人も多くいます。それがお金になっているケースもあります。

技術指導、レッスンについては、特定の人やグループに向けてのものがだめです。それはプロの領域になります。不特定多数に向けて「グリップはこうします」などと発信するのはいいですが、「動画を見たが、うまくいかない」という相談がきて、その人に返信するのはだめです。

――アマとして競技に参加しないのであれば、これまでもそうでしたが、いくらお金をもらってもいいのですか。

そうですね。それを隠して競技に出場するのがだめです。

ゴルフの根本にある「誠実さ」が問われる

ゴルフとお金は切っても切れない関係なのだが、今回の改訂でプロとアマの違いが明確ではなくなったことは確か。プロより稼ぐアマが現れるかもしれない。

オリンピック競技でもプロの参加が認められるようになり、ネット上ではゴルフに関する発信も多く、インフルエンサーも登場している。ゴルフに限らず、さまざまな分野でプロとアマの垣根がなくなってきている今の時代に、少しでも合わせるためといえる。

ただ、卓越した技術を見せることでお金にするプロと、お金のためではなく自分の技術の向上、コースへの挑戦を目的とするアマの、はっきりした線引きがゴルフの特長であり、魅力でもあった。

市村氏は最後にこう話した。

「ゴルフにとって根本にあるのが『誠実さ』です。自己規律のスポーツとして、どう整合性が取れるか。例えば(お金のために)スコアを操作する、インチキをするようになる、ということが起こらないでほしい」

ゴルフ規則1にある「すべてのプレーヤーに期待される行動」として、1番目に記載されているのが「誠実に行動すること―例えば、規則に従う、すべての罰を適用する、プレーのあらゆる面で正直である」だ。ほかのスポーツと違って、第三者の審判がおらず、自分ですべてを審判するスポーツだ。それだけに、今回の改訂がどう影響するか、注視しないといけない。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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