ネパール人をランチに誘ってはいけません? 日本人の常識は、世界の(かなり)非常識

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右という話のほかの例としては、私は7歳のときからつねに服の下に、右肩から左脇にかけてひもをかけています。これは強制ではありませんが、伝統的な習慣です。いつも右からかけていますが、亡くなった人を思うときには左からかけます。そしてお葬式に行って帰ったときにはつけていたものは捨て、新しいものをつけます。

――生活の中に宗教的な観念が多く含まれているのですね。

今は核家族になったり、仕事の関係からずいぶん変わってきました。お話した習慣も伝統的な考えと思ってください。ネパールではまだまだ女性の教育は低いですが、それでも公的機関や政府機関で働く女性も多いです。3分の1ぐらいは女性です。

祭りのために、1カ月の給与を追加!

――宗教の行事などで意識しなければいけないことはありますか?

祭りはとても大切で、たくさんあります。その中でもダサインやティハールなどは重要です。ダサインは親族や友達との再会の時で、1カ月分のお給料が追加で支給され、1週間お休みになります。羊や鶏などの雄のみを捧げます。雌はデリケートなものとして神には捧げないのです。

年配の人や親戚のところにあいさつに行き、年配の人からティカ(お米に食紅とヨーグルトをいれて混ぜたもの)をおでこにつけて祝福してもらいます。ネパールの人は家族が多いのですが、とても大切にして温かい心と尊敬の念を持っています。助けたり、助けられたりは当たり前です。

またネパールの人はとても柔軟性があります。ヒンドゥー教も仏教もあるので、ほかの人がどの宗教であっても気にしません。柔軟性があるので、日本に来ても日本の生活に慣れます。

――日本語を流暢に話す人が多い印象があります。

ネパールにはたくさんの日本語学校があり、多くのネパール人が日本語を学んでいます。ネパールと日本とのかかわりはとても深く、6世紀にまでさかのぼるのです。仏陀が中国に入り、仏教が日本に入ってきました。899年に大阪の禅の僧侶がチベットに行く途中にネパールを訪れ、とても気に入って、それ以降、何度もネパールに行きました。1900年代にはネパールの首相は明治の日本に興味を持ち、技術や日本がどうやって発展したかを学ばせたいと、ネパールから8人の留学生を日本に送りました。技術を学ばせたかったのと、仏教を布教したかったのです。

もっとたくさんの留学生を送りたかったのですが、第2次世界大戦が始まりました。それから少し経って、1952年、日本のチームがマナスルへ登ることにチャレンジし、1956年に達成しました。その際には昭和天皇が「日本は第2次世界大戦で大変なことがあった、この登頂成功のニュースはとてもうれしいニュースだ」とおっしゃられたそうです。

ネパールはとても戦略的な場所にあります。中国とインドという大きな国に囲まれているので小さく見えますが、その分、何かを作ればインドと中国に税金がかからず輸出できるのです。お茶やコーヒーもおいしいですし、コスメティックでもとてもよいものがあります。今、ネパールから多くの人が日本に来ており、これからもっと両国の交流が盛んになることを願っています。

(撮影:今井 康一)

竹村 真紀子 IWCJ代表

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たけむら まきこ / Makiko Takemura

一般財団法人International Women's Club JAPAN(IWCJ)代表理事
International Women's Club ASIA(IWCA)事務局長。日韓中を中心にグローバルマインドをもつ家族で構成される俱楽部を運営し、アジア圏でのビジネスマッチングを推進するとともに、次世代がアジア人としてグローバルに活躍できるよう、30カ国以上の駐日大使館の協力を得て、子ども向けにリトルアンバサダー・プログラムを開催。国際機関で海外人向けの「日本のビジネスマナー」研修を担当。
 

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