背が伸びない中高生に多い「NGな睡眠習慣」の中身 成長ホルモンの分泌に必要なのは「闇の時間」

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朝日が網膜に当たると、セロトニンと呼ばれるホルモンの分泌が促進されます。朝日は、目にとって特別な光です。朝日は東からさしてきます。地球は東に向かって自転しているので、朝日には光のドップラー効果が加わります。

救急車のサイレンは、向かってくるときには高く(ピーポー)、遠ざかっていくときには低く聞こえますね(ヘ~ホ~)。あれと同じ現象が光にも起こっているのです。朝日は緊張度が高く、脳を目覚めさせる大事なスイッチというわけ。セロトニンは、脳内全体の信号を活性化し、さわやかな寝覚めをもたらすとともに、一日中、意欲を下支えし、脳の学習能力を高めます。生きる力の源となるホルモンなのです。

朝寝坊して、朝日を見逃すなんて、本当にもったいない。また、セロトニンは、上質な眠りをつくり出すホルモン・メラトニンの材料にもなります。早起きすれば、夜、自然に眠くなる。「早寝、早起き」とよくいいますが、科学的には「早起き、早寝」でワンセットです。

13~17歳の過ごし方が重要

先に述べたように、「背、伸びなさい」と命令する成長ホルモンと甲状腺ホルモンがしっかり効いていてはじめて、背が伸びる可能性を手にします。

これらは胎児のときから成人になるまでふんだんに分泌されますが、特に大人体型の下で最大限に働くのが、男子の場合、13歳から17歳くらいまで。160センチの身長を180センチにまで押し上げるのが、この時期なのです。このタイミングを逃してはいけません。

前に記した2つのホルモンの分泌を促し、上手に背を伸ばすには、

1.上質な眠り
2.脳神経回路への過度のストレスを避ける
3.適度な運動

の3つが不可欠になります。

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運動は、物理的に骨端線を刺激し、骨の成長を加速させます。同時に基礎代謝が上がることで、甲状腺ホルモンと相乗作用を起こします。

上質の眠りのためには、0時(真夜中てっぺん)を寝て過ごすこと。脳神経回路への過度のストレスの筆頭は、日没後の、パソコンやスマホの電子画面の視覚刺激です。くよくよ悩むのも、背のために避けてください。

とはいえ、現代の中高生は、ストレスがゼロというわけにはいかないでしょう。受けてしまった脳神経系のストレスを解消するカギが、ビタミンB群です。肉に多く含まれるビタミンB群は、背を伸ばしたい男子の強い味方。と同時に、脳を活性化するので、勉強の強い味方でもあるのです。肉食は、男子の基本ですね。

ただし、せっかくとったビタミンB群も、炭酸飲料やジャンクフードの中の糖質が、その代謝に使うために奪ってしまいます。肉・魚・卵・乳製品をしっかりとること。これは基本ですが、せっかくとった栄養素を捨てないために、糖質過多の間食を避けることも大事な知恵です。当然、骨の材料になる栄養素も、しっかりとらなければなりません。

黒川 伊保子 人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリスト、随筆家

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くろかわ いほこ / Ihoko Kurokawa

1959年、長野県生まれ。奈良女子大学理学部物理学科卒業。コンピューターメーカーでAI(人工知能)開発に携わり、脳とことばの研究を始める。1991年に全国の原子力発電所で稼働した、“世界初”と言われた日本語対話型コンピューターを開発。また、AI分析の手法を用いて、世界初の語感分析法である「サブリミナル・インプレッション導出法」を開発し、マーケティングの世界に新境地を開拓した感性分析の第一人者。近著に『妻のトリセツ』(講談社+α新書)、『女の機嫌の直し方』(集英社インターナショナル)、『夫婦脳』(新潮文庫)など多数。

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