懐かしい「子供番組」の歴史で見えたテレビの課題 動画配信時代に埋没しないために必要なこと

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子ども番組の歴史をたどります(写真:jessie/PIXTA)
テレビが家庭に1台だったころ、子ども番組は各局のタイムテーブルに溢れていた。親子で一緒に見る番組、子どもたちがちょっと背伸びをして見る番組、憧れの参加型番組など、子どもの学びと成長に寄与するような番組の数々は、放送史上貴重な財産である。本稿でぜひ振り返ってもらいたい。

テレビは子どもとどう向き合ってきたのか

子ども時代はあっという間に過ぎてしまう。人生のなかでもごく一部でしかないが、多くのことを吸収する大事な時期だ。親など家族から学び、学校や世間、書籍やテレビなどのメディアからも学ぶ。

では、子どもたちの成長にかかわるテレビ自身は、子どもたちとどう向き合ってきたのだろうか。

『GALAC』2021年12月号の特集は「少子化時代の子ども番組」。本記事は同特集からの転載です(上の雑誌表紙画像をクリックするとブックウォーカーのページにジャンプします)

NHK東京テレビジョンは、1953(昭和28)年2月1日午後2時に開局した。テレビ契約台数がわずか866というなか、さっそく午後6時30分から「子供の時間」が放送された。童謡歌手の古賀さと子らが出演するバラエティ形式の30分だったという。

この「子供の時間」は、NHKがラジオでも用いた番組名で、ラジオのほうも東京放送局の本放送開始日の1925(大正14)年7月12日に始まっている。東京・名古屋・大阪の3放送局が合併して現在のNHKとなった翌1926年9月には午後6時開始に固定されており、ラジオ開始の段階で、午後6時台が「子ども中心の時間帯」として定着していたことになる。

この編成方針は、民間放送でもほぼ同じだった。1953年8月開局の日本テレビは、翌週31日月曜日から、日中の放送休止明けの午後5時30分に「テレビ子供新聞」「テレビ動物園」や人形劇などを開始。こちらは直接の競合を避ける意味もあったのだろう。午後6時台には娯楽番組を多く並べた。1955年開局のラジオ東京テレビ(現TBSテレビ)は、平日の日中休止明け午後6時10分からを影絵劇や人形芝居、短編映画などを揃えた。

1959年にNETテレビ(現テレビ朝日)とフジテレビが開局しても、大きくは変わらない。特にNETでは、午後6時57分から連日、気象情報に大人も子どももないとは思うが「こども天気予報」を放送している。

この年はNHK教育テレビも開局。皇太子ご成婚などをきっかけにテレビが飛躍した年とされている。読売新聞は他紙に先駆けて番組表をテレビ主体の配置に変えた。当時の番組表を見ると、午後6時台から10時台までが同じ行数(教育テレビのみ小さい番組表)で、この扱いは1960年代後半まで続く。

“子どもの時間”が主要な位置を占める時代はたしかにあった。そして、子ども向けといえる番組群が午後7時台までの2時間のなかで数多く制作されていく時代が始まった。

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