40分に1本「無料町民バス」実証実験は成功するか 震災10年の津波被災地をたどる・女川雄勝編

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だが、江島と出島の2つの港(出島、寺間)とも乗船客の姿はまばらだった。橋の完成後、出島への航路は町民バスに置き換えられて廃止の可能性が高く、残る江島航路が危ぶまれる。ローカル鉄道やバスとは違い、住民がいる限り、すぐ廃止とはいかない。

女川町は住民の交通手段を守ることに熱心で、10月1日からは町中心部の町民バス路線に手を加え、主要3線は40分間隔という高頻度運転を実現させた。各線は離島航路を含めて接続体系を築いており、スーパーなどの大規模商店や公共施設への、住宅地からのアクセスを容易にしている。 9月にはまだ1乗車200円かかっていたが、さらに10月から2022年3月末まで運賃を無償とする社会実験も行っているところだ。

ワゴン車3台が集結

海が荒れた出島・江島航路から戻った次は、海岸沿いに南北に延びる2本の町営バス路線を目指す。9月に筆者はスケジュールの都合上、11時08分発の五部浦線小屋取行きで往復している。女川駅前はJR石巻線、ミヤコーバス女川線と接続する町民バスのターミナルで、11時過ぎには、五部浦線のほか、もう1本の沿岸路線である北浦線、浦宿方面へ向かう安住・清水線の3台が集結。次々に駅前広場にワゴン車が入ってくる様子はなかなか壮観だ。

JR石巻線の女川駅。バス各路線と接続する(筆者撮影)
五部浦線の終点小屋取は女川原発のすぐ側(筆者撮影)

牡鹿半島と同じく地形が険しいため、このあたりの道路は、やはり海岸から離れた山間部を縫って通っている。一部、海に面した区間もあるが、そういうところは山側で新しい道路の建設工事が進んでいる。五部浦線は1日3往復だが、震災後に高台へ移転した「団地」と称する新しい集落に、丹念に立ち寄る。高齢者は上り下りが困難な坂道なので、町営バスがアシストしているのだ。

終点の小屋取は太平洋に面した、女川原子力発電所の入口に当たる小さな漁村だった。朝に立ち寄った江島は、この沖にある。発電所を挟んだ半島の反対側が、前日に訪れたばかりの牡鹿町の寄磯になる。途中、東北電力の寮もあったが、職員の通勤には町営バスは関係していないようである。

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