日本に「オードリー・タン」が誕生しない納得の訳 「天才」がムダになる環境になっていないか

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世界中が新型コロナウイルスに脅える中、台湾のデジタル大臣であるオードリー・タン氏が注目を浴びた。デジタル化が遅れている日本に、タン氏のような人物は現れるのだろうか(写真:Sean Marc Lee/Bloomberg)
昨年、世界中が新型コロナウイルスに脅える中で、最も注目された人物の1人が台湾のデジタル担当大臣であるオードリー・タン氏でしょう。どうしたらタン氏のような若くて優秀な人物が遺憾なく能力を発揮する場をつくることができるのでしょうか。ロバート・フェルドマン氏と加藤晃氏による共著『盾と矛 2030年大失業時代に備える「学び直し」の新常識』より一部抜粋して紹介します。

台湾を支える「逆メンター」制度

生活習慣がよく、医療水準が高い日本。しかし、なぜ国民はコロナ対応の結果が不十分だと思っているのでしょうか。「政治のせいだ」「役人のせいだ」という意見は100%間違いではありませんが、短絡的です。

むしろ、日本の国としての技術経営が足りないのが理由ではないかと思います。2つの側面、すなわち危機管理力と技術開発・実装力に問題があると思われます。まず、コロナ対応がうまくいった例を見てみましょう。オードリー・タン大臣が指揮をとった台湾の例です。

世界各国が、台湾がコロナをうまく抑え込んだことに驚いています。この成功の背景に誰がいるのでしょうか。その1人は、驚くことにGEの伝説の会長であったジャック・ウェルチです。もちろん、台湾のコロナ対策の成功は、かなりの部分がデジタル担当大臣のオードリー・タン氏のおかげであると言われており、その通りだと思います。

タン大臣が天才であることに異論の余地はありません。知能指数が180以上、中学以後は学校へ行っていないにもかかわらず、独学でコンピューター・プログラムを駆使して、16歳で会社を設立。巨額の富を得て、33歳の若さで「退職」しました。2014年、反体制の「ひまわり学生運動」でデジタル技術を利用して広報に大きく貢献したのは彼女です。

反体制派であったタン氏は、面白いことに当時の国民党内閣のデジタル大臣であった蔡玉玲に注目されました。2014年後半に、蔡玉玲大臣がタン氏を「逆メンター」にしました。若い方が年配の方にアドバイスをする役割です。蔡玉玲大臣は、タン氏の能力を借りて、国民党政権においてデジタル国策を推進しました。

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