今も残る「プロマイド専門店」が見たスターの素顔 2500人もの笑顔を捉えた「マルベル堂」の物語

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「マルベル堂は大正10年に浅草で創業し、昨年100周年を迎えました。創業者である三ツ澤実四郎は無類の映画好きで、外国映画のスチールやスターのポートレートをたくさんコレクションしていたんだそうです。

そのころのスターといえばもちろん映画スターのことですが、 そのスターの写真をプロマイドと名付け、日本で最初に販売した会社のひとつがマルベル堂だったというわけです。当時の高級印画紙『ブロマイド』を使ったスターの写真を売る業者がほかにも何社かあって、業者間で決めた呼び名が『プロマイド』だったのです。だから、正解は『プロマイド』。今でも残っているプロマイド店はこのマルベル堂だけなんですよ」

あなたは誰のファンでした? (写真:吉澤健太)

「レンズの向こうにアナタのファンがいるんです」

「『スターとファンの間に立って、若人の夢を満たしてあげるのだ』──これは三ツ澤実四郎の言葉です。プロマイドは言うなれば夢。時代とともに物価や材料費が上昇しても、1枚のプロマイドはおよそコーヒー1杯の価格をキープしてきました。学生でも買える価格でプロマイドを販売できるよう、生産スタイルを合理化したり、多角経営に乗り出した諸先輩方の苦労があって、現在のマルベル堂があります。

いままで撮影したスターの数はおよそ2500人余り。アイドル全盛期にはお互いにとても忙しくて、学校帰りに制服で寄ってもらい、そのまま撮影したこともありましたし、マルベル堂のカメラマンが撮影所に常駐していたこともあります。ヘアメイクなんていないし、そのまま撮影していたんですよ。え、画像加工? ない、ない。一切していません。当時から、みなさん肌や歯がキレイでした。さすがですよね。

なかには疲れて不機嫌なスターもいたかもしれません。そんなとき、私の師匠であった中村孝は『このレンズの向こうにアナタのファンがいるんだよ』と声をかけていました。するとみんな、ふっとうれしそうな笑顔になるから、すかさずシャッターを切る。そんな現場をいくつも見てきました」

懐かしのたのきんトリオ(写真:吉澤健太)
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