学歴がないから、「多くの人の知恵を借りる」 たくさんの意見を聞いてから決める衆知経営

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確かに、自分ひとりの限られた知恵で実行しても、失敗することが多い。いろいろな人の話、意見を求め、考えや結論をまとめていけば、それだけ失敗を回避できる確率が大きくなる。松下幸之助は、こうした経験知から、「衆知経営」という、独特の経営手法を作り出していく。従って、社員にも、「独断は危険、衆知を集めて経営をしろ」と言うことを繰り返し、話をしていた。

1977年1月、ある新聞記者の取材に答えて、次のように答えている。

できるだけ聞いていく

まあ、そうですな、会社を経営していくにあたっては、やはり、いろんな人の声を聞かんといかんですな。外の人の話も聞く。社内の人の話もよう聞いていく。できるだけ聞いていく。そういうなかで、せんならんこと、やらんといかんことが自然と浮かんできますわな。出てきますわな。人の言うことに耳を傾けていくことが、経営をしていく上にあたっては、大事なことです。けど、そのときに心がけんといかんのは、素直になってというか、素直な心ですな。とらわれて聞いておったら、大切なことを見過ごしてしまいますからね。それじゃあ、あきませんわ。

まあ、そうは言っても、忙しいですからな、経営者なり、責任者というのは・・・。なかなか聞いている場合もないこともある。しかし、たとえ聞けない、聞く機会がないという場合でも、みんなが何を考えておるか、みんなの考えはどういうものなのか、察知して命令なり、指示を出せんといけませんな。経営者たるものは、そういうことが出来んといかん。

そのためにも、日頃から、いろいろと話を聞いておく。いろいろと教えてもらっておく、尋ね学ぶということをしておかんとね。人の話を聞く、人の意見に素直に耳を傾ける、これが、経営者にとって大事なことと言えるのではないでしょうか。

ある意味、松下幸之助は、「多くの人の知恵を借りる賢い経営」をして、経営に成功したと言えるかもしれない。

江口 克彦 一般財団法人東アジア情勢研究会理事長、台北駐日経済文化代表処顧問

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えぐち かつひこ / Katsuhiko Eguchi

1940年名古屋市生まれ。愛知県立瑞陵高校、慶應義塾大学法学部政治学科卒。政治学士、経済博士(中央大学)。参議院議員、PHP総合研究所社長、松下電器産業株式会社理事、内閣官房道州制ビジョン懇談会座長など歴任。著書多数。故・松下幸之助氏の直弟子とも側近とも言われている。23年間、ほとんど毎日、毎晩、松下氏と語り合い、直接、指導を受けた松下幸之助思想の伝承者であり、継承者。松下氏の言葉を伝えるだけでなく、その心を伝える講演、著作は定評がある。現在も講演に執筆に精力的に活動。

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