日本の財政健全化に向けた新戦略は、困難な道のりへのポジティブな第一歩《ムーディーズの業界分析》

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ソブリン・リスク・グループ
SVP -リージョナル・クレジット・オフィサー
トーマス・バーン

菅直人首相は先月、日本の財政再建と経済活性化に向けた与党・民主党の政策を発表した。菅氏の戦略は現実性の十分あるものであり、当面は日本のAa2格付けと、「安定的」の見通しを支える一助となるポジティブなものである。6月24日にはこれを受けて、指標となる10年物日本国債流通利回りが7年ぶりの低水準となる1.14%まで低下した。しかし、市場の信認を維持するためには、政策の詳細を具体化し、今後1年で戦略の実施を進めていくことが必要となる。

政府の中長期的「財政運営戦略」の要旨の説明に当たり、菅氏は教訓としてギリシャのケースに言及しながら、断固とした行動をとらなければ日本の財政は「破綻」に直面すると述べた。菅氏は中期目標として、2009年度は対GDP比で約8%だったプライマリーバランス(国債関係の歳出・歳入を除いた基礎的財政収支)の赤字を、15年度までに半減させるとしている。また、長きにわたり先送りされてきた消費税率引き上げを15年度までに実施することを提言している。

菅氏の長期的目標は、プライマリーバランスを20年度までに黒字化し、対GDP比での債務比率を安定化させることである。財政均衡への道筋をつけるため、政府は11年度の新規国債発行額が今年度予算の水準である約44兆円を上限とするようにする。歳出の拡大も凍結する。

内閣は、10年に及ぶ低成長から抜け出し、債務負担を削減するための「新成長戦略」も発表した。計画の成功に最低限必要とされる名目3%、実質2%の成長率という目標まで日本のGDPを拡大するためには、将来の法人税率引き下げ(現在、先進国の中で最も高い水準にある)と、アジア・太平洋地域全域への自由貿易圏の拡大を含む、供給・需要サイドの施策が不可欠である。

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