日本の財政健全化に向けた新戦略は、困難な道のりへのポジティブな第一歩《ムーディーズの業界分析》

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 新戦略の強みは、政治的・経済的にも現実性があることである。財政政策には消費税率引き上げをはじめとして、実現には政治的支援を必要とするものが含まれるため、同政策は段階的に実施されるだろう。経済成長見通しは野心的だが、楽観的ではない。

菅氏の政策の弱みは、歳出・歳入面の施策のタイミング、方法、程度において具体性が欠如している点、ならびにその長期性である。財政問題を抱える他の高格付けの政府は、より切迫感を示している。

たとえば、日本と同様に深刻な財政赤字に直面する英国の新政権も先週、財政健全化目標を発表したが、その内容は菅氏の計画よりはるかに確固とした決意を示したものである。英国の計画では、5年以内に現在の構造的な赤字を解消することを目指している。

段階的なアプローチに伴うリスクもある。小泉純一郎元首相が同様の長期財政健全化政策に着手した当時に比べ、日本はより厳しい課題に直面している。小泉元首相の政策では、世界的景気後退がなければ、プライマリーバランスの黒字化という目標を2012年までに実現することになっていた。日本の財政赤字は小泉元首相の就任時より悪化している。政府債務は倍増し、金利が低下したとしてもそこから得られる恩恵は取るに足りず、グローバルおよび地域の貿易の持続的拡大による成長促進の見通しは、はるかに不透明になっている。

とはいえ、政府の安定的な資金調達基盤である国内市場が信認を維持し、政府債務の大半が国内で保有されるという状況が続けば、政府の段階的な債務削減戦略は実現可能である。しかし、戦略の実行段階での失敗や、不安定な世界経済からのダウンサイド・リスクを許容する余地はほとんどない。

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