もともと失言「インフレ率2%目標」に固執する暗愚 日本の「自然インフレ率」他国より低い1%以下?

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「インフレ目標2%」には、理論的な根拠は特にないといいます(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
今回は、「インフレ2%」を目標として財政拡大を続けることの危険性を解説してもらう。

今回の記事のまとめは、以下の通りです。

(1)2%のインフレ目標に達するまで、財政出動を続けるべきだという主張がある
(2 )しかし、2%のインフレ目標に確固たる根拠はないので、財政出動の目標にすることはおかしい
(3)この2%インフレ目標はもともとニュージーランド連銀総裁の失言が始まりだった
(4)そもそもインフレ目標とは、インフレ率を抑えるために設定された高インフレ時代の名残である
(5)さらに、1960年まで、世界のインフレ率は1%前後で推移していた
(6)日本のインフレ率は1980年から先進国のインフレ率をずっと下回っている
(7)日本の「自然インフレ率」は人口減少によって下がっているので、海外と同様のインフレ2%が達成できるとは考えがたい
(8)よって、2%のインフレ目標は1%に戻すべきであって、2%を経済政策の目標にするべきではない

日本の「2%目標」は他国を真似しただけ?

「日本はデフレ不況から抜け出せていないので、デフレ対策を講じるべきだ」という主張をよく耳にします。曰く、巨額の財政出動によって需要を増やし、日銀が掲げている2%のインフレ目標が達成されるまで継続するべきだという主張です。

『日本企業の勝算』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

しかし、そもそも安倍政権になってから、日本はデフレでもなければ不況でもありません。これは経済指標を見れば誰の目にも明らかな事実です。ですので、このタイミングでデフレ不況対策を行っても、なんらかのプラスの効果をもたらす可能性は低いと思います。逆に、巨額の財政出動を行うのはさらなる危険をもたらします。

特に、2%のインフレ目標をターゲットにして財政政策を実施するのは、はなはだ危険だと言わざるをえません。前回の記事(「プライマリーバランス黒字化」凍結すべき深い訳)で論じたように、財政出動の基準は乗数効果、雇用と賃金にするべきであって、インフレ率を目標にするのは間違いです。

そもそも2%のインフレ目標が合理的であるという、確固たる科学的な根拠は存在しないのです。

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