「プライマリーバランス黒字化」凍結すべき深い訳 財政出動の判断基準は「乗数効果、雇用、賃金」だ

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プライマリーバランスの黒字化は、コロナと関係なく「凍結すべき」といいます(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、このままでは「①人口減少によって年金と医療は崩壊する」「②100万社単位の中小企業が破綻する」という危機意識から、『日本企業の勝算』で日本企業が抱える「問題の本質」を徹底的に分析し、企業規模の拡大、特に中堅企業の育成を提言している。
今回は、プライマリーバランスの黒字化目標を当面、凍結すべき理由を解説してもらう。

今回の記事のポイントは、以下のとおりです。

(1) 社会保障費の増加によって、政府の先行投資が著しく不足している
(2) 生産的政府支出の対GDP比は先進国平均24.4%に対し、日本は10%以下
(3) 生産的政府支出の不足によって、GDPの成長率が低迷している
(4) 結果、財政が悪化している
(5) この状況を正すには、生産的政府支出を大幅に増やすべき
(6) 金額は、最終的に年間数十兆円の規模まで増やすべき
(7) したがって、当面はプライマリーバランスの黒字化の目標は凍結すべき
(8) 新規財政出動はバラマキではなく、乗数が1以上の元が取れる支出に集中させるべき
(9) 何に対してどれだけ財政出動をするかは、雇用の量と質を基準にして決定するべき

毎年「数十兆円規模」の財政出動をせよ

日本は、人口減少と「3大基礎投資」の不足が要因となり、賃金が上昇せず、経済が成長しない状態に陥っています。この状況から脱却するには、研究開発、設備投資、人材投資という「3大基礎投資」を喚起し、経済を成長させ、その成果で賃金を上昇させるための経済政策が求められます。

つまり、長期的な経済成長や賃金の引き上げは、あくまでも投資によってのみ実行できるという経済学の大原則を忘れてはいけないということです。

持続的な経済成長は、バラマキによって達成できるものでは断じてありません。国際決済銀行の「Consumption-led expansions」の分析によると、個人消費主導の景気回復は相対的に回復力も持続性も弱いと確認されています。

私は5年前から日本経済に関してさまざまな分析を行い、以下に挙げる政策を提言してきました。

(1) 労働分配率の引き上げ
(2) 研究開発予算の増加
(3) 設備投資の喚起
(4) 人材投資の促進
(5) 格差縮小のための最低賃金引き上げ
(6) 輸出の促進
(7) 中小企業の強化
(8) 黒字廃業の回避
次ページこれらの政策に必要な予算規模は?
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