年収も見た目も悪くない。結婚する条件は整っていたので、見合いは組めた。ただ、婚約破棄の苦い経験から、キャリア志向ではなく、結婚後に仕事を続けてもいいが、家庭を第一に考えてくれる相手を探そうと思っていた。
婚活にはありがちだが、自分がいいと思った相手からは振られ、ちょっと違うなと思った相手からは積極的にこられる。振ったり振られたりが続き、あっという間に1年が経っていた。そして出会ったのが、さゆり(36歳、仮名)だった。小さな会社で事務をしている、おとなしくて地味なタイプの女性だった。
「『相談所を成婚退会したら、すぐに入籍したい』と言うんです。お互い地方出身者で一人暮らしだったし、家は早く1つにしたほうがよいと僕も思いました。コロナ禍で結婚式ができる状況ではなかったから、両家の顔合わせだけ終え、ひとまず入籍をしたんです」
「そうしたら、入籍した翌週に彼女が仕事を辞めてきた。どうも職場の人間関係がうまくいっていなかったようで。仕事を辞めたかったから、入籍を急いだみたいなんですよね」
入籍した翌週に勝手に仕事を辞めた
相談もなく仕事を辞めてしまったことに、まさやは少しムカッときた。
「『別にさゆりちゃんの稼ぎをあてにしているわけではないけど、夫婦になったんだから、辞める前に一言相談があってもよかったんじゃない?』と言うと、『別に専業主婦をしたいわけじゃないし、住む場所が決まったら、そこから通えるところで仕事を探すよ』とのことでした」
そして、新居を決めて引っ越しをしたのだが、さゆりはいっこうに仕事を探す気配がなかった。
まさやが会社に出かけていくと、1日中部屋でゲームをやっていた。昼は惣菜パンやカップ麺を食べているのが、ゴミ箱を見るとわかった。夕食もご飯を炊いて味噌汁は作るが、スーパーの惣菜が2、3品並ぶだけ。
そして、夜の夫婦生活もまったくなかった。
相談所を成婚退会した後、キスはしたものの、その先のことをしようとすると、かたくなに拒否された。最初は「結婚するまでは、そういうことはしたくない」と言っていたのだが、結婚後は「今日は体調が悪い」、「疲れている」と、体に触れることさえ拒むようになった。最初は一緒だった寝室も、2カ月経ったころには別々の部屋で寝るようになっていた。
「結婚生活は、描いていたものとは別ものでした。仕事で疲れて帰ってきたら、食事がスーパーの惣菜で、妻の体には指一本触れさせてもらえない。食事を終えたら、自分で風呂にお湯を溜めて入る。これじゃあ、独身のときとまったく変わらない。それどころか、家賃、高熱費、食費を考えたら、1人増えている分、出費も増えている。すごくストレスを感じるようになりました」
結局、入籍から3カ月で、まさやから離婚話を持ち出した。最初さゆりは「離婚はしない」の一点張りだったが、さゆりの親にすべてを話したところ、親がまさや側についてくれてさゆりを説得し、入籍から4カ月弱で別居、その2カ月後には離婚となった。
ここまで話すと、まさやは私に言った。
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