フィリピン大統領に非難込めたノーベル平和賞 黄昏のドゥテルテ大統領に国際社会が与えた一撃

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立候補を届け出たのは、ボクシングから引退を表明したパッキャオ上院議員や、21年間大統領の座にあった故フェルディナンド・マルコス氏の長男ボンボン氏、イスコ・モレノ・マニラ市長、ロブレド副大統領とパンフィロ・ラクソン上院議員だ。

さらにノーベル賞受賞が発表されたころ、ロナルド・デラロサ上院議員が選挙管理委員会に駆け込んだ。元警察庁長官で麻薬戦争を指揮してきたことから、アメリカ政府が入国査証の発給を拒否した人物である。これに激怒したドゥテルテ氏が2020年2月、訪問米軍地位協定(VFA)の破棄をいったん宣言して米比関係がこじれた経緯がある。つまりドゥテルテ氏の側近中の側近である。

大統領自身も副大統領出馬を取りやめ

大統領選をめぐる世論調査でいちばんの支持を集めてきた大統領の長女サラ・ドゥテルテ氏は、地元のダバオ市長の再選をめざすとして大統領選には届け出なかった。一方、父親である大統領はかねて副大統領に立候補すると明言していたが、出馬を取りやめ「政界から引退する」と宣言した。

しかしこれで構図が固まったわけではない。2021年11月15日まで、すでに届け出た候補者を入れ替えることができるためだ。ドゥテルテ氏自身、前回の大統領選でこの奇手を使って当選した。

ドゥテルテ氏は「政界引退」を宣言した際、「サラが大統領選に出る」と話した。一方デラロサ氏は「締切日の8日午後3時に党から届け出るよう指示され自分でも驚いた」とラジオのインタビューで語り、サラ氏との入れ替えについて「問題ない」と表明した。つまりサラ氏が翻意した際の当て馬なのだ。

これまで、国民がドゥテルテ氏に寄せてきた絶対的な支持に陰りがみえている。「政界引退」を表明した際、ドゥテルテ氏は「国民の多くは私が副大統領選に出る資格がなく、立候補が憲法の抜け穴を利用する行為だと思っている。国民の意思に従う」と世論の支持が得られなかったことを理由に挙げた。

憲法では大統領の任期は1期6年と定められており、再選は認められない。大統領経験者が副大統領になることを禁じる規定はないが、大統領が欠員となった場合は副大統領が継ぐことになっているため、ドゥテルテ氏の副大統領選出馬表明以来、憲法上の是非が議論されていた。

民間調査機関「パルス・アジア」が2021年9月に調査したところ、ドゥテルテ氏の副大統領立候補に対して全体の6割、大統領支持者でも過半数が「憲法の趣旨に反する」と回答していた。

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