米英豪の協力強化が中国との新冷戦を象徴する訳 日本は最前線に臨む覚悟で日米同盟を進化させよ

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中国は台湾統一や尖閣諸島領有等の「核心的利益」の獲得のため、アメリカの軍事介入を阻止する戦略を実践している。中国は、第一列島線を基準にする接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略によって、中距離ミサイル等の通常戦力ではアメリカ軍と対等以上の優位な地域軍事バランスを獲得しつつある。

また質量両面でアメリカに劣る戦略核戦力においても、従来の「最小限抑止」から転換し、ICBM(大陸間弾道ミサイル)やSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の増強を急いでいる。南シナ海に面した海南島楡林海軍基地は、アメリカ本土を射程に入れるJL-3(巨浪3)を搭載する096型SSBNの拠点となろう。中国は、アメリカに劣っている海軍用高出力密度の原子力推進技術の開発が海上・海中優勢のカギと見なしており、ロシアからの技術協力があればその開発はより早く進む可能性がある。

アメリカ海軍大学のアンドリュー・エリクソン教授は、オーストラリアの決断にこの要因が影響した可能性を指摘し、AUKUSを中国の深刻な戦略的脅威を前にした「過去数十年間で最もgame-changingな軍事技術の取引」と評価している。

原子力潜水艦は通常動力型と比べ、隠密性、機動性、武器弾薬搭載量、そして持久力に圧倒的に優れる。潜航時間の制約となるのは乗組員の休養と物資補給の必要性のみだ。オーストラリアがフランスに要求した新型艦の航続距離、搭載ミサイル・魚雷の数、指揮管制システム等は、「本来なら原子力潜水艦で実現する仕様」(元自衛艦隊司令官の香田洋二氏、日経ビジネス)であり、仏との開発事業はコストの高騰や納期の大幅遅延に陥っていた。

豪中の対立が決定的に

一方、豪中関係は、オーストラリアが5G通信網事業からファーウェイ(華為技術)を排除したことなどから悪化、モリソン首相の新型コロナウイルスの起源をめぐる国際調査の要求に対し、中国が輸入禁止や関税追徴等の制裁措置を発動したことで対立は決定的となった。

毎年、豪中関係の世論調査を実施しているオーストラリアのロウイー研究所のナターシャ・カッサム世論調査部長は6月、今年の調査結果を公表し、「オーストラリアを経済的に痛めつけて中国の言いなりにならせようとする中国側の攻撃は、オーストラリアが政治家も国民も不退転の決意を固める結果に終わっている」と分析していた。AUKUSの発足と原潜への転換は、その不退転の決意が実現させたものと言えよう。

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