米英豪の協力強化が中国との新冷戦を象徴する訳 日本は最前線に臨む覚悟で日米同盟を進化させよ

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同盟国がアフガン撤退やAUKUSに抱く不信の根源はここにある。アメリカは、同盟国が対中新冷戦にどう関与するかを決めるのは、アメリカがパートナーとしてどれほど頼りになるかという同盟国の信任次第であることを再認識する必要がある。

一方、同盟国の側もアメリカへの一方的な依存を排し、アメリカ主導の民主同盟を支持するためのより能動的な行動が求められる。とりわけ日本は、地理的にも戦略的にも新冷戦の最前線・最重要の位置と地位にあり、QUADの一員であるインドやASEAN諸国からの信頼も厚い。日本はこれらの重要な域内諸国とAUKUSを繋ぐ紐帯としての役割を期待されている。さらに、中国有利に傾きつつある軍事バランスを改善するため、自衛隊とアメリカ軍との相互運用性を統合運用性のレベルまで高めることが必要だ。

日本はAUKUSに能動的に関与できる

第3に、AUKUSは、情報と技術の共有、科学・技術・産業基盤の統合を目指す点において、包括的かつ包摂的であることだ。原潜に続く協力分野に挙げられているサイバー能力、人工知能、量子技術は、4月の日米首脳会談で合意された「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」の協力分野と一致しており、日本はこの日米同盟の文脈からもAUKUSに能動的に関与できる。

対中戦略には軍事のみならず外交・情報・経済の総合的アプローチが必要であり、戦略的軍事技術や革新的両用技術の開発協力と共同保全は、今後の日米同盟にとって経済安全保障上の重要課題になる。

AUKUSは西太平洋における対中抑止体制を1段階格上げする扉を開いた。アメリカが追求する統合抑止のため、同盟国に求められる役割は一層拡大する。日本は外交や技術の強みを生かすと同時に、日本自身の防衛力とアメリカ軍との統合運用能力を格段に高める覚悟が求められる。AUKUSを含む重層的な地域安保の枠組みは、日米同盟の一層の進化を必要としている。

(尾上 定正/アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー、元空将)

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

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