塩野:わかります。これはあえて質問するのですが、ゲーム業界は当たると世界が一変しますよね。まったく新しいUIを考える人とか、全然違う課金方法を考えだす人が一人いるだけで世界は変わる気がするんです。それでもトラブルメーカーの天才より、協調性のある凡人のほうがいいですか。
林:あの、一番望ましいのは、すごい能力があって、なおかつ協調性もある人です。結局、過去にヒット作を出してくれた人は、みんなその両方を兼ね備えていますよ。本当にできる人たちって、自分を大きく見せる必要もないし、自分の属する組織に貢献したいという気持ちも強い。中途半端な人がいちばん「俺がすごいんだ」とアピールしようとして、ちょっとおかしな行動をとることが多いですね。
塩野:いま業界的にはエンジニアもデザイナーも不足していて、いい人を確保するのは難しいと思いますが、いい人を採るためにどんな努力をしていますか。
林:新卒を毎年20名前後採っているので、全国の大学を回るなど、会社としてやるべきことはやっていますが、特別話題性のあるようなことはしていないですね。
経営理念に共感した人に来てもらいたい
塩野:社長が全員と面接したりとか?
林:最終面接では全員に会っていましたが、今年からやめました。というのも複数で面談していて、終わったあとに「いまの人どうだった?」と聞くと、意見がほとんど僕と同じになるようになったので、もう任せてもいいかなと。
塩野:新しく入ってくる方に、「みんなで幸せになれる会社」とか「今から100年続く会社」とかおっしゃるんですか。
林:はい、新卒向けの会社説明会では、必ず僕が経営理念を語る時間があります。それに共感した人は来てください、というふうにしていますね。
塩野:どうして「みんなで幸せになれる会社」とか「今から100年続く会社」ということを思ったんですか。
林:まず、僕には「幸せというのは長く続かない」という感覚があるんです。
塩野:なんと。それはなぜそう思われるんですか。
林:僕が育った家庭はすごく幸せだったんですが、僕が9歳のとき父親が亡くなってしまって環境が急変したんです。人生には突然そういうことがあるんですよ。大人になって創業してからも、最初は順調だったのに、世の中の変化によって、いきなりうまくいかなくなることもありました。話がそれますが、起業したばかりのころは調子がよかったのに、そのあと傾く会社って多いでしょう。ちょっと厳しい言い方になりますけど、それは、何もしなくても今の状態が続くと思っているんですよね。だから変化を嫌うし、社内に対するケアも外の環境に対するケアも怠ってしまう。それゆえに終わってしまうんだと思います。
塩野:誰もがなんとなく放っておいてもいまの状態が続くと思っているから。
林:あるいは、うまくいったのはたまたまなのに、自分の実力だと思ってしまうか。
塩野:社長は子供のときに環境が変わって、まわりの人たちが変わったのもご覧になったんですか。
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