SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に

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このような日本礼賛ものは、最近はとくにYouTubeなどに比重が移ってきているように感じます。「中国人が日本のラーメンのおいしさに絶句!」「日本の街の美しさに驚く欧米人」といったタイトルの動画が目立ちます。

あたかも、日本人が他国民に比べて文化度が高く、手先が器用で繊細で、創造的なセンスにあふれた国民であるような気持ちになる。

ですが、ちょっと目を転じれば、多くの国々にもモノづくりの確固とした歴史や伝統があり、古くからの地場産業が栄え、世界的なブランドが出ている地域がたくさんあります。それらに目を向けようとせず、十分な比較や検証もなく、自分たちの文化が優れている、特殊だと考えるのは単なる思い込みで、自己満足的な妄想に近いのです。

ワイプで人の表情を抜く目的は?

テレビの話が出たついでにもう1つ。ワイドショーなどで、出演者たちの表情をワイプで抜くことがいまや当たり前になっています。悲惨なニュースには悲しい出演者の顔を映し出し、楽しい話の時には笑顔が映る。30年ほど前にはなかった映像手法だと思います。果たしてそのような映像が必要かと私などは思いますが、ワイプで誰かの表情を確かめないと安心できないということなのでしょうか。

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1つの出来事に対する反応や判断は人それぞれですから、いろんな反応、表情があったっていい。ところがワイプに出て来る表情は、皆同じです。もし、心和むような話の時に苦虫をかみつぶしたような表情をしていたら? きっとツイッターなどでさんざんに叩かれるでしょう。

ある出来事に対して、誰もが同じ感覚、同じ感情を持たなければいけない。そんな同調圧力のようなものを感じるのは、私だけではないと思います。

皆が笑っている時につまらなそうにしていたり、皆が悲しんでいる時に平然としていたりするのを許さない。いまの日本の社会の同調圧力、異質なものを認めないという傾向が表れているようにも思えます。つまり、異質なものに対する耐性が弱いということでしょう。自分と異質なものに対する恐怖心が、かなり強くなっているのではないでしょうか。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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