SNSがアメリカと日本にもたらした「真逆の現象」 どちらもコミュニケーション不全状態に
代わってはびこったのが、自分たちと立場を異にする者に対する敵愾心や恐れでしょう。そして誰かが自分たちの立場や利益を脅かそうと目論んでいるに違いない、という被害妄想、被害者意識が生まれてくる。それによって自己保身的に他者を排除したり、攻撃したりする排外主義が大手を振って台頭しているのです。
言葉を換えて言うならば、アメリカ人が対象を理解しようとする「読解力」を決定的に失ってしまった、ということに他なりません。
「異質な意見」が入りにくくなりがちに
翻って日本はどうでしょうか? アメリカほど深刻な分断が起きているわけではありません。しかしながら、日本の場合は、社会全体が一つのコンセンサスに基づいて一元化しがちです。アメリカのように分断、分裂化するほどの社会的なダイナミズムがあるわけではありませんが、同調圧力が高く、エコーチェンバー現象が起きやすい文化的な土壌があるように思います。
その上にネットやSNSツールの持つ閉鎖性が重なることで、同じ考え方や価値観を持った、同質性の高い者同士でネットワークが完結し、異質な意見が入り込みにくくなりがちです。自分たちの考えや意見が、あたかも多数派のように錯覚してしまうのです。
自分にとって心地よく都合の良い情報ばかりに囲まれ、いつしかそれが当たり前になってしまう。しかもSNSでやり取りするのは、皆自分と同じ意見の人たちばかり……。それが続くとどうなるか?
自分の意見や価値観が大多数の意見だと錯覚し、自分にとって異質な情報、都合の悪い情報を受け入れる許容力がなくなってしまうでしょう。コミュニケーションツールはたくさんあり、その中でのやり取りは膨大ですが、その内容は非常に貧困でワンパターンなものばかりです。
一見コミュニケーションがたくさんあるようで、じつはコミュニケーション不全の状態といってよいでしょう。そこでは決定的に「読解力」が失われていくことになるのです。
その流れの中で起きているのが、ときに過剰に思える日本礼賛ムードだと思います。テレビの番組でも、相変わらず日本の伝統文化や科学技術などを外国人に紹介し、彼らが驚き、賞賛する様子を映すという、日本礼賛番組がゴールデンタイムに流されます。
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