「シメにラーメン食べる人」ほど体調不良に陥る訳 翌朝ダルくて起きれなくなるのも理由があった

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お酒を飲む人はアルコール代謝が優先されるため、つねにNADの需要が増え、NADHからNADがリサイクルされる反応が促進されることは前項で述べた通り。

このリサイクル反応のなかには、オキザロ酢酸からリンゴ酸をつくる反応も含まれる。つまりアルコール代謝が優先しておこなわれているときには、TCAサイクルをまわす出発点に必要なオキザロ酢酸が消費されてしまい、TCAサイクルがまわらなくなりATPがつくられないようになってしまう。いわばエネルギー不足状態となるわけだ。

理由3:低血糖になる

もう1つ、飲んだ翌日のだるさの原因に、アルコール代謝の過程で低血糖を起こしやすくなることが挙げられる。普段からお酒をよく飲んでいる人や糖尿病の人がたくさんお酒を飲んだ場合は特に注意してほしい。

なぜ、アルコール代謝が優先されると低血糖になってしまうのか。そのメカニズムについて説明しよう。

食事を通して得られる血糖(血液中のブドウ糖)は、私たちの体のエネルギー源になる大切なものだ。

通常の場合、食事を摂ると血糖値はゆるやかに上がり、その後インスリンというホルモンの働きによりゆるやかに下がる。

しかし、食事によって大量の血糖が入ってきたり、インスリンの調節がうまくいかないと、血糖値が上がりすぎたり下がりすぎたりする「血糖調節異常」が起こる。これが低血糖症だ。

血糖値が下がりすぎると、体のエネルギー源が得られなくなってしまうため、私たちの体は「糖新生」というシステムで血糖値が下がりすぎるのを防いでいる。

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例えば山で遭難したときに、水だけを飲んで何とか数日間しのぎ発見されることがある。そのようなときでも意識はしっかりしている。これは、食べ物を食べなくても体の脂肪を分解しエネルギーをつくり、糖新生によって血糖値を維持しているからである。

糖新生による血糖値の維持では、まず肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を血液中に供給する反応が起こる。ところが正常な人であっても肝臓のグリコーゲンの貯蔵量は少なくて、数時間で枯渇してしまう。

飲酒習慣がある場合には、肝臓でのグリコーゲン貯蔵量は著しく減少しているため、ほとんどあてにならない。

肝臓のグリコーゲンからの糖新生がなくなると、体は別の方法で血糖値を維持しようとする。筋肉などに蓄えられたアミノ酸のうちブドウ糖へ変換することができる糖原性アミノ酸を材料に、おもに肝臓でブドウ糖をつくり血液中に供給して低血糖を防ぐのだ。

溝口 徹 医師

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みぞぐち とおる / Toru Mizoguchi

1964年神奈川県生まれ。福島県立医科大学卒業。横浜市立大学病院、国立循環器病センターを経て、1996年、痛みや内科系疾患を扱う辻堂クリニックを開設。2003年には日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニック(現・みぞぐちクリニック)を開設。オーソモレキュラー(分子整合栄養医学)療法に基づくアプローチで、精神疾患のほか多くの疾患の治療にあたるとともに、患者や医師向けの講演会もおこなっている。著書に『2週間で体が変わるグルテンフリー健康法』『発達障害は食事でよくなる』(小社刊)、『花粉症は1週間で治る!』(さくら舎)などがある。

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