岸田総理誕生で待望論「夫婦別姓」見えざる苦悩 働く女性に高いハードル、事実婚を選ぶ人も
岸田新内閣が発足し、10月31日には衆議院議員選挙が行われる見通しだ。争点の1つとして浮上するのが、選択的夫婦別姓制度の問題である。
「次の衆院選が、国会と自民党内を(選択的夫婦別姓に)賛成の議員に入れ替える機会になれば」。選択的夫婦別姓の早期実現を求めるビジネスリーダー有志の会の共同代表を務める青野慶久氏(サイボウズ社長)は9月末、自民党総裁選後のオンライン会見で期待を寄せた。
岸田文雄総理は10月13日の参議院本会議の代表質問で、公明党の山口那津男代表から選択的夫婦別姓について問われ「国民各層の意見や国会の議論の動向を注視する」と慎重な姿勢を示している。しかし自民党内の選択的夫婦別姓制度推進派の議員連盟に参加しており「岸田氏個人のスタンスとしては賛成なのだと思う」と青野氏は語る。
婚姻届の提出直後から膨大な手続き
政府は「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性比率を30%にする」という目標を掲げる。この達成に向けて障壁になりかねないのが、夫婦同姓制度だ。現状では婚姻した夫婦のうち96%が夫の姓を選んでいるが、その過程で女性の起業家や経営者が苦悩するケースは数多い。
「仕事で忙しい中、時間に迫られ神経をすり減らした」
大津たまみさんは、今年初めに経営者の男性と再婚した。シングルマザーとして息子を育て上げ、姓を変える決断をした。大変さは覚悟のうえだったが想像以上だった。
大津さんは前夫と離婚後、清掃会社など5つの会社を設立。女性経営者として多忙な日々を送る。しかし婚姻届を提出した直後から膨大な手続きに追われ、仕事にまでしわ寄せが及びそうになった。
法務局での登記や銀行、補助金を受けている自治体や国での名義変更などそれぞれに必要な書類を用意しなければならなかった。姓が変わってから2週間以内など、期限が決まっている場合もある。代表者の姓が変わることが想定されていない制度も多く、代表者名の変更のために自分で自分に委任状を書くこともあったほどだ。
煩雑な手続きを一人でこなすことは難しく、司法書士に代行を依頼せざるをえなかった。5つの会社の手続きを終えるまでに半年間かかり、手数料や司法書士への依頼費用などで出費は100万円にのぼった。「浪費させられる時間とお金に怒りを覚えた」(大津さん)。
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