この命、義に捧ぐ 門田隆将著
副題は「台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡」だが、終戦直後の内蒙古で「在留邦人4万を救った」前段も読み応えがある。
武装解除命令を拒否した根本駐蒙軍司令官は、ソ連軍との死闘を通じて在留邦人を帰国させた。武装解除して率先帰国し民間人を見捨てた関東軍とは対照的だが、このときの根本の言動が本題への重要な伏線となっている。
蒋介石のいわゆる「徳をもってせよ」発言に恩義を深く感じた根本は、昭和24年、国共内戦で敗色濃い蒋を座視できず死を覚悟して台湾に密航する。
密航の準備と決行、優れた戦略家でもあった根本の作戦が奏功し金門島で国府軍が完勝する戦いの細部、根本や湯恩伯最高司令官の功績が歴史から抹消された後日談、どれも興味深い。
日台双方の軍人や関係者の遺族を追跡調査して構成された秘史は、ドキュメンタリーとして出色の質の高さであり、根本の人間像が何より魅力的で、「義」についてあらためて考えさせられる。(純)
集英社 1680円
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