課長になったらクビにはならない 日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣 海老原嗣生著 ~課長とは「企業内特殊熟練者」

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課長になったらクビにはならない 日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣 海老原嗣生著 ~課長とは「企業内特殊熟練者」

評者 中沢孝夫 福井県立大学特任教授

 入社して5年、10年そして20年と職歴を重ねつつあるビジネスマンはみな悩む。第一選抜ではないにしても、それほど遅れているわけではない、と思える自分のキャリアをどのように伸ばせるのか、と。そういうビジネスマンは本書を読むとよい。

「企業には普通の人が大量に必要なのだ。天才ばかりでは、船頭多くして船は山に上ってしまう。そして、その普通の人がキャリアをまっとうしていけない限り、企業の成長もない。そう考える企業が健全であり、そういう仕組みを社内につくるのが良い経営なのだろう」と著者は結論づける。

試行錯誤を重ねつつも、多くの企業がそういう経営を継続していると評者も思う。それは「日本型雇用」と呼ばれているが、実はアメリカでも普通の勤労者の職場生活のスタイルなのだ。

「人は裸のまま道を歩くのではない。裸の自分に対して、自分なりに服やよろいをまとって歩いていく。キャリアとはそういうものなのだ」。そして「その服やよろいを作る材料は自分の中に必ずあるし、時間的猶予もそれなりにある」と本書は語るが、まったくそうなのだ。ビジネスマンは職場でさまざまな課題に取り組みながら人を知り、職務を経験しながら厚みを身につけるのだ。

そのように「部下のことをよく知り、社内に人脈を持ち、職務においては好不況のどちらの時期も経験して一家言を持っている」人。つまり「企業内特殊熟練者」が課長になる。

キャリア形成で大切なのは、長期プランをたてることではなく「目の前の階段を上ること」。そしてほんの少し勇気をもって、新しい「経験に飛び込むこと」のようである。しっかりとしたデータに支えられたキャリア形成論だ。

えびはら・つぐお
リクルートエージェントのフェロー、人事・経営誌『HRmics』編集長。HRコンサルティング会社ニッチモ代表取締役。専門は人材マネジメント、経営マネジメント論。1964年生まれ。リクルートワークス研究所『Works』編集長など経る。

朝日新聞出版 1260円 189ページ

  

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