BRICs特需に攻め込む森精機製作所の超繁忙
国内がピークを打っても、米国向けは依然好調が続く。中計を早々とクリアした工作機械大手が次に目指すのは、さらにもう一段上のステージ、売り上げ3000億円。狙うは中国、インド、ロシア、ブラジル市場-。
(週刊東洋経済2月16日号より)
「サブプライム問題以降も、北米での工作機械需要は減少していない」。森精機製作所の森雅彦社長は、世界的株安から急激にしぼんだ景気実感とのギャップに当惑する。大方の懸念をよそに、工作機械は依然として海外、特にBRICsからの受注が活況だ。確かに国内はピークを打ったが、森精機がモニタリングしている約1万台の工作機械の稼働状況は、高い水準を維持したまま、落ち込んでいないという。
米国ではむしろ、これまで設備投資を控えてきた自動車メーカーが動き出した。しかも「環境対応で、より精度の高い工作機械が不可欠」(森社長)という。実はこれからが日本の工作機械の出番なのである。
17期ぶり最高益更新へ 3カ年計画を前倒し達成
ほかにも、ボーイングなど航空機産業の活況が続いている。特に高度な加工を必要とするエンジン、足回り部品の製造では、日本製工作機械がフル回転する。たとえば航空機用エンジンの世界3強の一角、プラット&ホイットニーのカナダ工場だけでも、約1000台の工作機械が稼働している。20年で償却するとしても、毎年50台の更新需要がある。
原油100ドル台時代の到来でエネルギー関連も動き出した。原油価格の高騰は掘削など関連需要を盛り上げる。その動きは石油、LNGだけでなく、金などあらゆる天然資源関連に波及している。
2月5日、第3四半期の業績発表で、森精機は2008年3月期の売上高、利益ともに予想を上方修正した。連結純益ベースで、17期ぶりの最高益更新が現実になりそうだ。
この勢い、実は05年度にスタートした中期3カ年計画「Mori568プラン」上で、すでに伏線が張られていた。568の「5」は世界シェア5%、「6」は連結売上高原価率60%、「8」は月産800台体制の確立を目指したもの。08年3月期の達成目標はしかし、実質的に1年前倒しで達成していたのだ。
計画当初、前提条件として世界の市場規模を3・5兆円と推測。当時の森精機のシェアは04年受注ベースで3・5%程度だった。その後売り上げは急拡大、前期は目標に迫るシェア4・9%を達成した。今期に入り、さらに目標シェアを5・4%へ引き上げたが、それも程なく、中間期実績でクリアしている。
売上高原価率の目標も前期にクリアした。当初計画では1ドル=107円、1ユーロ=128円という円高水準を想定していた。が、その後の円安推移を反映させ、同じく今期に入り58・5%へ再設定。しかし、これもまた今中間期で達成してしまった。
3番目の月産800台体制については、瞬間最大風速ながら07年3月に月産830台をたたき出している。その後、高付加価値の複合加工機へ生産シフトを進めたため台数ベースでは減少。このため目標を715台に再設定した。今中間期実績は673台で、これだけは目標未達だが、目下生産増強計画を進めており、こちらもほぼ射程内に収めている。