BRICs特需に攻め込む森精機製作所の超繁忙
絶え間ない増産体制構築 高価格機種へ絞り込み
となれば、焦点は早くも今春以降の次の3カ年だ。もう一段上のステージは、いったいどんな絵を描くのか。具体的な内容は現在策定中だが、「売上高で2700億~2800億円が見えている。3000億円が次の、一つの大きな目標になりそうだ」と森社長は自信をみなぎらせる。
世界の工作機械市場、とりわけ航空機部品や自動車エンジンなど精密加工分野では、森精機、ヤマザキマザック、オークマの日本勢、ドイツのDMGグループの4強が市場を分ける構図が出来上がっている。その中で成長を維持していくには、絶え間ない増産体制とサービス網の構築、という究極の一点に尽きる。
布石は着々と打たれている。
森精機の社員の半数が働く三重県・伊賀製作所。鋳物・板金・主軸・加工・組み立て等の工場のほか、開発センター、ショールーム、ゲストハウスを備え、総敷地面積は57・5万平方メートルと甲子園球場14個分。工作機械工場としては国内最大である。
現在、複数の新工場建設に向けた用地造成の真っ最中。第1期は09年春に稼働予定だが、全工場がフル稼働する5年後には、年間500億円規模の売り上げ増が見込まれる。
製品構成では、すでに、低価格機種について中堅繊維機械の石川製作所にOEM委託を始めている。生産委託で空いた奈良事業所のスペースは高機能複合機の増産に充てていき、こうした外部委託の促進で100億円程度の売り上げ上乗せをもくろむ。このほか、昨年12月にジャスダックに上場した研削盤子会社、太陽工機も増強していく方向だ。
また海外では、高級機種で知られるスイスの工作機械メーカー、ディキシー・マシーンズを06年に買収。昨年10月からは高機能マシニングセンタや複合加工機の設備を大幅に拡張、設備増強を進めている。現在、同社の年商は30億円程度だが、ひとまず100億円を目標に増産体制を整えていく方針だ。
国内外で同時並行的に増産体制を敷いていくのは、当然、それだけの需要増を確信しているからだ。
市場急成長の背景として森社長が挙げるキーワードが、「世界的な人口増加と資源・環境問題、そしてクオリティ・オブ・ライフ(QOL)」。
世界人口は65億人から将来90億人に増加すると予想されている。それは同時に、欧米並みの生活水準を希求する層の裾野を広げ、より高品質な工業製品への需要を広げ、マザーマシンである工作機械の需要を広げる。資源の枯渇や環境問題への取り組みは、化石燃料の燃焼効率を上げる高効率エンジンの需要を後押しし、より高精度な工作機械の需要を押し上げる--。従来、景気循環の山谷に振られてきた工作機械業界に、時代が援軍になると読むのだ。