「させていただく」多用する人にモヤっとする理由 「大人にふさわしい文章力」を身に付けるための基本
正義の味方の民主党議員が、国家予算のムダづかいをする役人を懲らしめているような場面は記憶に新しいところです。このときに聞かれた「この事業は中止とさせていただきます」という説明にも違和感を覚えました。
民主党は選挙という国民の付託を経て政権を奪取しました。自らの政治信念から、政権交代を果たしたのであって、気おくれする必要はありませんでした。
「政治家は言葉が命」といわれますが、言葉をあまりにも容易に捉えてしまっていたように思います。本来、政治家に求められるリーダーシップからは、ほど遠い印象を与えてしまいました。普通に振る舞えばよかったわけです。
テレビで広がる「させていただく」
最近では、テレビでタレントがよく使用している「させていただく」ですが、丁寧な話し方だと思っているのでしょうか。「出演させていただきます」「お付き合いさせていただいております」などは、過剰なへりくだりにしか聞こえません。
文化庁は「させていただく」について「敬語の指針」の中で次のように解説しています。
『基本的には、自分側が行うことを、相手側又は第三者の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われる』
この指針から解釈すると、ポイントは2点あります。
・相手又は第三者の許可を受けている
・恩恵を受けているか
たとえば、「予定を変更させていただきます」を考えてみましょう。
予定を変更するには「相手の許可」が必要です。変更する主体は自分になりますので、恩恵を受けるのは「自分」になります。そのため「正しい使い方」であると考えられます。
間違った使い方にはどのようなものがあるのでしょうか。「ごあいさつさせていただきます」を考えてみましょう。ごあいさつには、相手の許可を必要とする場合と、形式的なものの2パターンが存在します。形式的な場合は相手の許可を必要としませんので注意が必要です。
また、次のような使い方にも気をつけなければなりません。
「先日お送りさせていただいた資料です。ご確認いただけましたでしょうか?」
実際にこのような文章を書く人がいるので注意してください。この場合は、「先日、お渡しした資料をご確認いただけましたか?」くらいシンプルにしたほうがいいでしょう。
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