「させていただく」多用する人にモヤっとする理由 「大人にふさわしい文章力」を身に付けるための基本
ほかにも、尊敬語と謙譲語の使い分けなどにおいて、明らかに間違った表現があります。先日、テレビの料理番組で次のような表現を使っているアナウンサーがいました。
「それでは、いただかさせていただきます」
もちろん「いただきます」で十分ですね。「拝見させていただく」という表現を使う人がいますが、これも間違いです。「拝見する」は「見る」の謙譲語です。「させていただく」も謙譲語ですから二重敬語になります。敬語は基礎的なスキルですが、文章でも口頭でも使い方を間違えると品格を問われてしまいます。正しく使うことを心がけましょう。
「置いておいて」も要注意
「させていただく」と同様に使い方が難しい表現があります。それは、「置いておいて」です。「置いて置いて」「置いといて」などいろいろな書き方を目にします。
正解は、「置いておいて」です。「置いておいて」は同じ言葉が連続するので、誤用ではないかと考える人が少なくありません。わかりやすく解説します。
「社長の机の上に置いておいてください」
これは、「置いておく」の連用形になります。「置いた状態で、そのままにする」という意味(「~て」+「おく」)になるので「正しい使い方」であると考えられます。
ただし、同音反復の形式になるので、見た目が美しいとはいえません。「置いておいて」が「置いて置いて」の動詞の重複につながるので、稚拙な表現に見えてしまうためです。
また、「置く」の動詞そのものに、「置いておく」の意味があります。そこに「~ておく」の補助動詞を置くので、少々しつこい感じがします。間違いではないものの、「置いといて」「置いておく」「置いとく」などに、言い回したほうがスマートに見えます。「置いて置いて」というように、漢字を連続させるのは好ましくありません。
さて、日本の古典和歌には反復表現が多用されているものがあります。「内大臣藤原卿、采女安見児を娶る時に作る歌一首」(『万葉集』巻第二、相聞95番)には、「安見児得有」(ヤスミコエタリ)を反復している箇所があります。
藤原鎌足が、天智天皇の采女・安見児を賜ったときの歌になりますが、手放しの喜びが、「ヤスミコエタリ」のくり返しに表れているのです。古典和歌の時代から、日本では反復表現がつかわれてきました。
さて、最近、スマホで文字を書くことが多くなったせいか、意味不明な言葉や非礼な文章が増えたように感じています。この機会に、アフターコロナで評価される「大人にふさわしい文章力」を身に付けたいものです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら