歴史が暴く「インフレなら経済成長」という妄信 インフレ率と経済成長には「複雑な関係」がある

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この考え方はインフレと経済成長との間に、相関関係のみならず因果関係があることを前提にしています。しかしその因果関係については、まったく検証されていません。特にインフレとデフレの歴史を紐解くと、この説には強い違和感を覚えざるをえません。

世界の歴史を振り返ってみても、インフレではなかったのに生産性が向上した事例、もしくはデフレだったのに生産性向上ができた事例は見つからないのでしょうか。もしもこういった事例が十分にあるのであれば、「インフレにならないと生産性向上はできない」とする説は、崩壊する可能性が高いと言えます。

何百年も続いていた「良いデフレ」の時代

アメリカの消費者物価指数は1635年まで遡ることができます。イギリスは1750年からのデータがあります。

アメリカでは1635年から1934年までの300年間、平均インフレ率は0.17%でした。イギリスは1750年から1934年までの間、0.62%でした。同じ期間のアメリカは0.40%でした。生産性は後ほど確認しますが、この時期には先進国の経済が急拡大しています。そうであるにもかかわらず、インフレ比率は異常なほど低かったのです。

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