「40〜50代社員の切り捨て」を企業が進める理由 50代以上の社員に投資する企業はわずか6%

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「4.業務委託契約」はもはや雇用ではない。これまで務めていた会社からフリーランスとなって、仕事だけを受注する形になるということだ。

「5.社会貢献事業への従事」も同様だ。「事業主自らが実施する」か「事業主が委託、出資(資金提供)などをする団体がおこなう」社会貢献事業への転籍を意味する。やはり会社の雇用からは外れるわけだ。

実は本項目は、これまでの高年齢者雇用安定法のなかでも、「65歳までの雇用確保措置」と銘打ってきた。しかし、今回はその名を「70歳までの就業機会確保」と変えている。「雇用確保」ではなく「就業機会確保」なのだ。

この2つに関しては、会社にとっては給料の支給がなくなるうえ、労働管理のコストもなくなる。さらには社会保険のコストもなくなるので、いかにも魅力的な選択肢だ。

労働者にとって「収入が下がる」ことは確実

労働者から見たらどうか?

まず業務委託契約のメリットはそれなりにある。完全に裁量制になるから自分のペースで仕事ができるし、仕事によっては、やればやるだけ収入が増える可能性だってある。

しかし、フリーランスだから厚生年金や健康保険といった会社の社会保険の枠組みからは外されてしまう。繁閑によって売り上げ・利益が変わるなど、会社員時代とは大違いの不安定さを味わうことにもなるだろう。少なくともこれまで会社のために尽くしてきた真面目で保守的なシニア社員ほど、この現実はこたえる。

社会貢献事業の従事も、これまでの仕事からガラリと様相が変わること、収入が下がることは確実だ。変わりたくない人ほど、厳しい道に映るだろう。

もっとも「4.業務委託契約」も「5.社会貢献事業」も労働組合からの過半数の同意などがないと導入できないルールになっている。実際に、これらを導入する会社は極めて少ないだろう。しかし、あえてこの2つを用意した国のメッセージは重い。

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