「40〜50代社員の切り捨て」を企業が進める理由 50代以上の社員に投資する企業はわずか6%

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これは労働者個人だけの問題ではない。今現在、退職を前に配置転換などの真っ只中で、まさに50代シンドローム状態に陥っている人といえば、1986〜1991年のバブル期に入社したバブル世代(1965〜1970年頃生まれ)に当たる。

当時の好景気にかまけて大量に雇用され、また年功序列が残っていた頃に入った彼らは、今や会社にいる最も大きなボリュームゾーンで、給与もプライドも高い世代だ。このボリュームゾーンがやる気をなくして生産性を下げたら、各企業にも、社会にとっても大きな損失と言えそうだ。

だから国は、そもそも55歳定年だったところを、2013年の改正高年齢者雇用安定法で60歳までに延長し、さらに65歳までの再雇用という道筋を立てた。しかし、政府が思うほど、この制度は美しくまわっていない。それぞれの現場で、給与とモチベーション・ダウンに苛まれたままの人が多いのだ。

そんな状況で施行されたのが、2021年の改正高年齢者雇用安定法。「70歳定年法」というわけだ。

人件費の抑制、待ったなし

2021年の改正は、簡単に言えばこれまでの定年を5歳上にそのままスライドさせたものだ。

【2021年・改正高年齢者雇用安定法の骨子】
次の1〜5のうち、企業はいずれかの措置を講じるよう努める必要がある。

1.定年を70歳に引き上げ
2.70歳まで継続雇用する制度の導入
3.定年制の廃止
4.70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
5.70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入

改正のポイントをかいつまんで説明する。

まずは1〜3はこれまでの改正高年齢者雇用安定法の「65歳までの雇用確保措置」を70歳へとそのまま引き上げただけと言える。これまで同様、「70歳まで継続雇用」を選ぶ企業が大半になると予想される。

70歳まで定年を引き延ばしたり、定年制を廃止するなどしたら、ただでさえ追い出したい高給取りで伸びしろを期待できないシニア社員を長く残すことになる。それでは厳しい企業間競争に勝てないからだ。

やはり形式定年に当たる60歳(定年60歳は改正法でも変わらない)で解雇、再契約によってぐっと給与を下げるという、人件費の抑制の方向に力が向くのは当然だ。

むしろ今回の改正で、その力はうんと強まるに違いない。それは次に続く4と5の項目「業務委託契約」を盛り込んだことからもうかがえる。

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