ジェネリック薬「どれも一緒」と考える人の大誤解 患者が積極的にメーカーを指定する時代が来る

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ジェネリック医薬品は、2005年に数量ベースで32.5%というマイナーな存在でしたが、2020年9月時点で78.3%まで成長(厚生労働省『令和2年薬価調査結果』)。すでにメジャーな存在ということができます。また、ジェネリック医薬品への転換がより進んでいる米国では90%を超えているのです。

わが国で、なぜジェネリック医薬品がこんな短期間に増えたのでしょうか。それは、厚労省が医療費の抑制のために、その普及を強力にすすめてきたからです。新薬から価格の安いジェネリック医薬品に置き換え、医療費を抑えようとしてきたのです。

そもそも新薬の開発には数百億円から数千億円という莫大な資金が必要となるため、その開発費が上乗せされて価格が設定されています。新薬メーカーは特許で守られた20年間はその薬を独占的に販売でき、開発費を回収することができます。そして、特許が切れるとジェネリック医薬品が登場するのです。

ジェネリック医薬品の価格は、販売当初は原則として先発医薬品の約半分に設定され、その後も市場価格の調査から薬価を改定され続けます。そのため、先発医薬品の価格の2割程度になる製品もあります。

ジェネリック医薬品が市場で増えることになれば先発医薬品の価格も低下し、結果として薬価全体が下げられます。また、ジェネリック医薬品への置き換えが進まない薬品では、一定の率で先発薬品の価格が下げられることになっているのです。

ジェネリック医薬品の品質は?

ジェネリック医薬品が承認される前には、① 規格試験(原薬・製剤の品質確保)、② 安定性試験(加速・長期保存)、③ 生物学的同等性試験(溶出試験、ヒトBE試験)などが実施された上で厚生労働省が審査します。さらに、国際的に医薬品の品質の保持のためにGMP(Good Manufacturing Practice;医薬品の製造管理及び品質管理の基準)が整備され、厳しい基準が設けられているのです。

このような厳しい審査があることや、最近は新薬のメーカーがジェネリック医薬品をつくったり、ジェネリック医薬品のメーカーに東証一部上場企業も増えたことから、私自身、患者さんに「ジェネリックでも大丈夫」とお話ししてきました。

ところが、自信を持ってそのように回答できなくなるような事件が2020年12月から2件立て続けに起きてしまったのです。

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