JR九州とJR北海道を分析する

上場は妥当か? 列車トラブルはなぜ続くのか?

ただ、肝心の鉄道事業を含む運輸サービスは、増収にはなったものの、営業損益はマイナス154億円からマイナス149億円と、大幅な営業赤字が続いています。「ななつ星in九州」などの新たな取り組みを始めても、赤字額はそれほど変わっていないのです。

つまり、鉄道事業の赤字を埋めるために、ほかの事業で利益を出しているという構図です。

損益計算書に戻ります。JR九州の特色は、「経営安定基金運用収益」という勘定科目がある点です。これが経常利益を計算する際に120億円も計上されています。

経営安定基金運用収益とは何でしょうか。貸借対照表(8~9ページ)の「純資産の部」に、「経営安定基金(以下、基金)」という項目があります。3877億円ありますね。日本国有鉄道が分割民営化された時、JR北海道、四国、九州のいわゆる「JR三島」会社は、鉄道事業が成り立たないと言われていました。しかし、鉄道をなくすわけにもいきませんから、基金が与えられたのです。その運用益で赤字をカバーして欲しい、というわけです。

ここで、基金の運用益が何%の利回りで回っているのかを計算してみましょう。運用収益120億円に対し、基金は3877億円ですから、運用利回りは3.1%になります。

ただし、今のような低金利時代に安定して3.1%で運用するのは、きわめて困難です。にもかかわらず、JR九州は、安定して高利回りを維持できています。なぜでしょうか。

基金の主な運用先は、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)への貸し付けと決まっています。この組織は、JR三島の経営自立を図るための団体ですから、安定的に運用益を与えられるように利回りが設定されているのです。

つまり、基金運用収益というのは、実質的にはJR三島の鉄道事業の営業赤字を補填するための補助金のようなものだということです。

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