では、基金運用収益を除いた場合、JR九州は、どのくらいの収益力があるのでしょうか。ROA(Return On Assets)を計算してみましょう。この指標は、総資産を使ってどれだけの利益を上げているかを示したもので、今回は利益には経営安定基金運用収益を含まない営業利益を使います。「営業利益÷資産合計」で計算されます。ROAは、営業利益のほかに、純利益や経常利益の割合を計算する方法もありますが、ここでは本業の実力を知りたいので、営業利益を使います。
安定基金運用益に頼る、JR九州の上場は妥当か
JR九州のROAは0.8%と、非常に低い水準です。JR九州は上場で得る資金をどのように使うかは今のところはっきりしませんが、現在の収益力では、得た資金のリターンも非常に低いものとならざるをえません。JR九州は上場して集めた資金で、経営安定基金を返済する可能性もあります。いつまでも援助に頼るような会社が上場するのは問題だと指摘される可能性があるからです。
しかし、その基金を返済したとしても、本業におけるROAは0.8%しかないのです。前期で115億円ある当期純利益も基金の運用益がなくなれば、大幅に減少します。
JR九州は、基金の運用益だけでは、鉄道事業の赤字が埋められない状況が続いています。それ以外の不動産事業や流通業によって、ようやく黒字化しているわけです。もし、基金を返してしまったら、同社はどのような増収の戦略をとるのでしょうか。一方、基金を保有したまま上場するのであれば、それはそれでおかしな話だと思います。このような会社が、投資家にとって本当に魅力があるのでしょうか。
それでも上場するのであれば、進めればいいと思います。ただ、これだけ低収益の会社に投資する人はどれくらいいるかを考えなくてはなりません。
JR九州は、主に九州の中で収益を上げていかなければならないのです。これまで、「ななつ星in 九州」を運行させたり、鉄道以外の事業に注力したりして、JR九州も努力しているのはわかります。しかし、基金運用益の穴を埋められるほど稼ぐ戦略があるのかどうかと考えると、なかなか難しいのではないかと思います。
例えば、事業の中で最も大きな利益を出している駅ビル不動産業については、すでに九州の主要都市に駅ビルを建ててしまっています。今は、博多の駅ビルが稼ぎ頭になっているのです。首都圏などにホテルを建てることなども行っていますが、これはこれで競争の激しい市場での事業です。
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