三宅:佐藤さんのキャリアはバラエティに富んでいて、その都度、新しいことを開拓してきているのが特徴ですね。最近も、再生医療保険という新しい分野の保険商品の開発を手掛けました。
佐藤:そうですね、巡り合わせがあるのかもしれませんね。
三宅:会社のほうで、佐藤さんを呼んでいるのかもしれないです。「新しいことが始まるぞ、こんなときは佐藤だ」みたいな(笑)。
北風ではなく太陽型のマネジメント
三宅:ところで月並みな質問ですが、御社の女性管理職は現在167人と、全社員の5%程度だと聞きました。女性管理職として難しさを感じているところはありますか。
佐藤:最初はただ女性管理職というだけで、「この人はすごい人なんじゃないか」とか、「キツい性格なんじゃないか」とか、先入観を持たれたこともあったと思います。でも自分と全然違う像を作られていると仕事がしにくいので、「そうじゃないよ」という部分を自然に出していくようにしていました。
三宅:それは、どんなふうにやるのですか?
佐藤:自分をさらけ出すことだが大切だと思っています。人間って、「この人、何を考えているかわからない」という相手には、本音を出さないでしょう。だからこうやってガハガハ笑いながら一緒に仕事して、話していれば、そのうち「この人はそんなに警戒しなくてもいい人だ」と思ってくれるだろうと。
三宅:その作戦に、僕もやられたわけです。お会いするまでは、さぞや厳しい人なんだろうと思っていた。でも名刺を渡されたときニコニコッとされて、一瞬「ん?」と思ったけれど、「これは作り笑いに違いない。実はキツい人だろう……」とまだ警戒を解かずにいた。ところが話してみるとあまりにも気さくだし、しかもこちらにすごく配慮した話し方をされる。つまり頭がいいのに、「こうでしょ!」と決めつけるのではなくて、「こうじゃないかな~と思ったりするんですけど」みたいにおっしゃる。こういう人はなかなかいないと思います。
佐藤:そうでしょうか(笑)。
三宅:マネジメントのスタイルでは、佐藤さんは典型的にイソップ童話の「北風と太陽」で言うところの太陽のほうですよね。北風と太陽のどちらがいいかは、僕が大学時代から悩み続けている個人的なテーマでもあります。
項羽と劉邦という2人の武将の話が、「史記」に出てくるでしょう? 項羽は典型的な北風マネジメントの人で、めちゃくちゃ強いし、戦いのときは先頭に立って領土を広げていく。でも部下にきつくあたるし、言うことを聞かない部下の首を斬ったりするので、そのうち部下が離れていく。逆に劉邦は、戦に弱くてやたらと敗戦を繰り返すのに、人のことを信頼しその人の能力を引き出すのがとてもうまい。それでいつのまにか劉邦の下に人が集まってくる。それを繰り返してついには項羽が劉邦の大軍に囲まれて四面楚歌になって負けてしまうという話です。
つまり、項羽のほうが個人としての能力はわかりやすくてカッコいいけど、劉邦は周囲の人に、「しょうがないな、劉邦のためなら」と思わせる魅力がある。項羽と劉邦ではいったいどちらがいいのか、ずっと考えているのです。
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