マネジメントは「北風」型か「太陽」型か?

東京海上日動火災の佐藤重実部長に聞く(後編)

三宅:太陽マネジメントが理想ですが、太陽型を実践するとたいてい組織がまとまらず崩壊してしまうし、北風型のほうが短期的な効果は出やすいと言われています。個人としての能力も高くて優秀な佐藤さんを劉邦にたとえるのは失礼ですが(笑)、太陽型マネジメントで成功している希有な例だと思います。

そこで質問なのですが、佐藤さんは、あえて太陽型でやっていらっしゃるのか。それとも自然に太陽なのか。そして太陽なのに組織を崩壊させず、成果を出せているのはなぜなのかについて、お話し願えませんか?

佐藤:あえて意識はしていないですね。自然にだと思います。たぶん私自身、太陽型の上司の下で働くほうが力を発揮できると思っているからではないでしょうか。それにうちの社員は優秀なので、太陽マネジメントをしたからといって、みんなだらけて何もしない、組織が崩壊するなんてことはありませんよ(笑)。

北風は強制的にやらせるから進み具合が早いかもしれませんけど、部下の社員の満足度は低いと思うのです。働く社員の満足度を高めたり、仕事のやりがいを感じるには、自らの発意や主体性を持つことが大切なんじゃないかと。

それに、北風マネジメントは、対立軸を作ってしまうと思うのです。人って対立する相手には防衛本能が働くでしょう。火の粉が降りかかってこないようにすることにエネルギーを注ぎ始める。「余計なことをしたら怒られるかもしれない」「言われたことだけやっておけばいいや」と。それよりは部下と同じ方向を向いて、相手の見ている景色を想像しながら、「こういうふうに進もうよ」と言える関係のほうが、いろんなアイデアが生まれやすいと思いますね。

三宅:僕もできるだけ太陽マネジメントでいこうと思うのですけど、時にそうじゃない自分がいて、「うりゃーっ」と力づくで押さえ込んでしまいたくなる。その衝動に耐えるにはどうしたらいいのでしょう。

佐藤:「うりゃーっ」とですか(笑)。でも別に耐えなくていいんじゃないですか。つねに太陽である必要はないので。私だってダメなときはダメってちゃんと言いますよ。

私の場合は、太陽型のほうが最終的に仕事が早く進むような気がするんですよ。部下が北風型の上司を恐れて、何も言えずに問題を抱え込んでしまうよりは、何でも話してもらって、一緒に正しい方向に進んで行くほうがうまくいくような気がします。だから無理も我慢もしていません。それにしかめっ面をしている人には、誰も寄ってきませんから。

三宅:だからいつも笑顔なんですね。しかも佐藤さんがすごいのは、一回方向性を打ち出すと、それがブレないことだと部下の方にお伺いしました。毎回違うことを言う上司とか、言うとおりにしているのに「なぜこんなことをしているんだ」としかる上司とか、みんな多かれ少なかれ、ブレがあるものですが、佐藤さんにはそれがないとのこと。そうすると余計なストレスがないから、「もっと工夫してみようかな」「あんなことも提案してみようかな」と考えるようになるとも、部下の方々はおっしゃっていました。

相手が心を開いて話せるようにする

三宅:われわれがビジネスプロデューサーと呼ぶ、企業の中にいながらイノベーションを起こすような人は、たいてい佐藤さんのようなタイプだなと感じています。おそらく部下本人も気づいていないような、ちょっとしたアイデアの芽を大きく育ててあげるみたいなことを、かなりしているのではないですか。

佐藤:言われてみれば、「それいいね」とか「あ、それいいじゃん。やってみようよ」なんて言うことはけっこうあるかもしれません。

次ページ“土瓶”と言われたこともある
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • コロナ後を生き抜く
  • インフレが日本を救う
  • コロナショック、企業の針路
  • スージー鈴木の「月間エンタメ大賞」
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
コロナ時代の新教養<br>今こそ最強の武器を手に入れよ!

ピンチをチャンスに切り替えるためには、脳内メモリーのリフレッシュが必要です。知の巨人による9の講義と、在宅で自己研鑽するための独習術、そして今読むべき厳選書籍を紹介し、新常態にふさわしい知力を鍛え上げる62ページ大特集です。